2017年に公開された映画「ハクソー・リッジ」
監督は「リーサル・ウェポン」シリーズや「ブレイブ・ハート」で知られる…メル・ギブソン。
彼のことは、俳優としても監督としても好きです。
10年以上前から、“ハリウッドの闇”について真実を暴露している尊敬すべき男。
この映画も、ずっと観たかったのにまだ観ていなかった映画のひとつです。
実在した人物の事実に基づいた作品。
舞台は沖縄、大激戦となった“前田高地”ということで…敵は日本人となりますが…。
なんかちょっと複雑だね…
確かに…
映画「ハクソー・リッジ」
Xより
ハクソー・リッジ(Hacksaw Ridge)は、2016年(日本は2017年)公開のアメリカの伝記映画。
第二次世界大戦の沖縄戦で衛生兵(Combat Medic)として活躍した、“デズモンド・T・ドス”の体験による事実に基づいて製作された作品。
STORY
アメリカ・ヴァージニア州で生まれ育った“デズモンド・ドス”は、弟の“ハロルド”(ハル)と酒に溺れ暴力を振るう父“トム”と優しい母“バーサ”と暮らしていた。ある日、デズモンドは病院で出会った“ドロシー・シュッテ”と恋に落ち結婚した。第二次世界大戦が激化する中、デズモンドは「衛生兵」として出征するために陸軍に入隊する。しかし、彼は自身が信仰する宗教上の理由で、ライフルを持つことさえ出来なかった。家族の助けもあり、何とか衛生兵として出征することを許可されたデズモンドは、1945年5月に沖縄「ハクソー・リッジ」へと派遣された。凄まじい激戦を目の当たりにしたデズモンドは、決意を固めてあり得ない行動をとる…。
監督:メル・ギブソン
上映時間:139分
誰も殺さない…
武器も持たない…
ハクソー・リッジ
ハクソー・リッジ(Hacksaw Ridge)とは“弓鋸の尾根”(ゆみのこのおね)の意で、前田高地の150mある「のこぎりのように切り立った崖」を見て、アメリカ軍がそう呼んでいたという。
デズモンド・T・ドス
デズモンド・トーマス・ドス(Desmond Thomas Doss)は、ヴァージニア州リンチバーグ出身のアメリカの軍人。
大工の父親“ウィリアム・トーマス・ドス”と母親“バーサ・エドワード・ドス”の間に生まれ、母親はデズモンドを敬虔な「セブンスデー・アドベンチスト教会」の信徒として育てた。
その教えは、“非暴力・菜食主義・安息日遵守”というものである。
1942年にバージニア州リー駐屯地で兵役に就いたが、信仰上の理由から武器を携行することも敵兵を殺すことも拒絶した。
第77歩兵師団第307歩兵連隊第1大隊B中隊第2小隊に「衛生兵」として配属され、1944年“グアムの戦い”と“フィリピン諸島の戦い”に出征しブロンズスターメダルを受章。
1945年には第96歩兵師団として“沖縄・前田高地の戦い”に出征し、通称「ハクソー・リッジ」(Hacksaw Ridge)と言われた前田高地の断崖上で75人もの負傷兵の命を救った。
沖縄でデズモンド自身も4度に渡り負傷したが、沖縄戦での功績が認められ終戦後1945年10月12日に名誉勲章(メダル・オブ・オーナー)を授与される。
良心的兵役拒否者(Conscientious Objector)としては、史上初めての軍人最高の栄誉である「名誉勲章」の受章であった。
戦後は戦争での負傷や結核により障害を負っていたが、ジョージア州の小さな農場で家族と暮らしていた。
1942年に“ドロシー・シュッテ”と結婚し、1946年に一人息子の“デズモンド・“トミー”・ドス・ジュニア”が生まれる。
1991年にドロシーが自動車事故で死亡し、1993年に“フランシス・デューマン”と再婚した。
2006年3月23日、デズモンドはアラバマ州ピードモントの自宅で87歳で死去した。
監督
メル・ギブソン
メル・ギブソンは、ニューヨーク州ピークスキル出身のアメリカとオーストラリアの映画俳優、映画監督、脚本家、映画プロデューサー。
ニューヨークで生まれるが、父親の事業の失敗で1968年に家族でオーストラリアに移住した。
オーストラリア国立演劇学院で演技を学び、1979年に映画「マッドマックス」の主役で人気となりスターとなった。
オーストラリアの映画界で活躍した後、1982年にアメリカ映画に初出演をし1987年に映画「リーサル・ウェポン」で人気者となった。
「リーサル・ウェポン」はシリーズ化され、メル・ギブソンの人気を確立した。
1995年に映画「ブレイブハート」で監督業に挑戦し、アカデミー監督賞を含む5部門を受賞。
その後も、2004年「パッション」2006年「アポカリプト」2016年「ハクソー・リッジ」で監督を務めている。
プライベートでは、DVや暴言などでたびたび世間を騒がせている。
「リーサル・ウェポン5」を監督する予定のメル・ギブソンですが、実現できるのかはまだよく分かりません。
2024年現在で既に68歳の彼ですが、期待していた“リッグス”としての主演は…無理でしょうね。
主演
アンドリュー・ガーフィールド(デズモンド・ドス役)
アンドリュー・ガーフィールドは、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のアメリカ・イギリスの俳優。
アメリカ人の父親とイギリス人の母親の間に生まれた二重国籍保持者。
アメリカで生まれ、3歳の時にイングランドのサリー州エプソムに移住した。
高校卒業後に「セントラル・スクール・オブ・スピーチ・アンド・ドラマ」で演技を学ぶ。
舞台俳優からキャリアをスタートさせ、2004年にMEN Theatre Award、2006年にイヴニング・スタンダード演劇賞の新人賞を受賞した。
2007年“ロバート・レッドフォード”監督の「大いなる陰謀」で映画デビュー。
同年の「BOY A」で英国アカデミー賞テレビ部門主演男優賞を受賞。
2009年に“テリー・ギリアム”監督の「Dr.パルナサスの鏡」に出演し、2010年に“デヴィッド・フィンチャー”監督の「ソーシャル・ネットワーク」と「私を離さないで」に出演。
2012年に「アメイジング・スパイダーマン」で主演し、2017年の「ハクソー・リッジ」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。
2018年に舞台「エンジェルス・イン・アメリカ」で主演を務め、トニー賞演劇主演男優賞を受賞した。
アンドリュー・ガーフィールドは、やはり「アメイジング・スパイダーマン」のイメージが強いです。
若い頃からその演技力を評価されていて、様々な演技賞を受賞しています。
この作品でも、素晴らしい演技を披露していました。
キャスト
役名 | 役者名 | 説明 |
---|---|---|
デズモンド・ドス | アンドリュー・ガーフィールド | 良心的兵役拒否者であり、第77歩兵師団の二等兵で“衛生兵”となる ハウエル軍曹に「トウモロコシ二等兵」と呼ばれる |
ハロルド・“ハル”・ドス | ナサニエル・ブゾリック | デズモンドの仲の良い弟であり、彼も軍隊に志願して戦争へ行く |
トーマス・ドス | ヒューゴ・ウィーヴィング | デズモンドの父親で、酒に溺れ妻や子供に暴力を振るう 第一次世界大戦で兵士として戦い心に傷を負った |
バーサ・ドス | レイチェル・グリフィス | デズモンドの優しい母親 彼を“セブンスデー・アドベンチスト教会”の信徒として育てた |
ジャック・グローヴァー大尉 | サム・ワーシントン | 第77歩兵師団の部隊長で、武器を持たないデズモンドを除隊させようとする |
ハウエル軍曹 | ヴィンス・ヴォーン | 第77歩兵師団の指揮官で、デズモンドたちの訓練を担当している 口では厳しいことを言うが、その奥には優しさもある |
スミティ・ライカー | ルーク・ブレイシー | デズモンドと同じ第77歩兵師団の二等兵で、デズモンドを訓練でいじる ハウエル軍曹に「大バカ二等兵」と呼ばれる |
ミルト・“ハリウッド”・ゼーン | ルーク・ペグラー | デズモンドと同じ第77歩兵師団の二等兵で、ムキムキで全裸でいた男 ハウエル軍曹に「キンタマ二等兵」と呼ばれる |
ランダル・“ティーチ”・フラー | リチャード・パイロス | デズモンドと同じ第77歩兵師団の二等兵 心優しい男で、デズモンドのことも気にかけている |
ドロシー・シュッテ | テリーサ・パーマー | 看護師として病院で働いている女性 病院でデズモンドに声をかけられ、恋に落ちやがて結婚する |
ハウエル軍曹のつけるあだ名…
“キンタマ二等兵”には笑った
感想
“ハクソー・リッジ”(前田高地)での激しい戦闘が、とても生々しくて恐ろしい。
”スティーブン・スピルバーグ”監督の「プライベート・ライアン」をも凌ぐと言われている。
艦隊の砲撃の迫力、飛び交う銃弾の怖さ、吹き飛ぶ脚のグロさ…
人がバタバタと死んでいく激戦に、時折り目を背けたくなります。
お互いに見知らぬ相手を次々と殺していく…戦争とは一体なんなんだ…。
彼らが敵として殺すのは“日本人”だし、観ていて複雑な気持ちになる。
そして、こんなところに武器も持たずに来るなんて…デズモンドはイカれています。
どれだけの信念を持って、彼はここに来たのだろうか…。
彼が起こした“奇跡”には感動しましたが、いろいろと考えさせられる作品でした。
デズモンド
幼い頃に喧嘩で弟を殺しかけたことで自分を責め、「汝、殺すことなかれ」という教えを胸に刻んだデズモンド。
成長したデズモンドは、弟や周りの友達が次々と戦地へと出征していく中…居ても立っても居られなくなり陸軍へ志願する。
しかし、彼は良心的兵役拒否者であり、信仰上の理由から銃に触れることを拒否します。
それを理由に上官からしごかれ、仲間から虐められてしまう。
“人を殺したくないのに戦争に行きたい”なんて、誰もが不思議に思うでしょう。
軍需工場で働いていたデズモンドは、兵役が免除されていたし結婚して間もなかったのに…それでも戦争に行きたいと言う。
“愛国心の塊”なのか、それとも“ただのバカ”なのか、なかなか理解に苦しみます。
そんな彼を待ち受けていたのは、“ハクソー・リッジ”と呼ばれる崖の上にある「地獄の戦場」でした。
多くの仲間を失い部隊が撤退していく中、デズモンドは一人残り夜通し息のある仲間を探し救出します。
無尽蔵のスタミナで救出活動を続け、“臆病者”と言われた彼が…結果的に75名もの負傷兵を救い出しました。
彼は信念を貫き通し、誰も殺さずに前人未踏の快挙を達成したのです。
傷ついた日本兵に出くわし治療するシーンがありましたが、実際にあんなこともあったのでしょうか。
そして、彼は日本人を憎んでいたのでしょうか。
最後のインタビューで、日本や戦争について語って欲しかったと思いました。
“help me get one more.”
“もう1人助けさせてください”
とても印象に残る言葉でした。
デズモンドは自分にそう語りかけ、一心不乱に仲間を助け続けます。
“日本人も2名崖から降ろしてきたが亡くなった”なんてセリフがありましたが、それも本当にあったのでしょうか。
実際にあったとしても下で殺されたんでしょうが、デズモンドは敵も味方もわからず無心で息のある者を救っていたのかもしれません。
それにしても、75人とは…とんでもない気力とスタミナだと思います。
まさに、“メダル・オブ・オーナー”(名誉勲章)に相応しい活躍です。
トーマス
デズモンドの父親であるトーマスは、第一次世界大戦に出征し心に傷を負いました。
友を失い、戦争の悲惨さと無意味さを知っていたはずです。
それでも、息子たちを止めることが出来なかった。
退役軍人の多くが心を病みPTSDなどに苦しむと言いますが、トーマスも酒に溺れアル中になってしまいます。
妻のバーサは、デズモンドに「あれは本当の姿じゃない、戦争に行く前の姿を見せてあげたい」と言う。
壮絶な戦争体験が、彼を変えてしまったことがわかります。
トーマスが息子たちを止められなかったのは、愛国心に満ちたかつての自分を重ねたからでしょうか。
どうしても“衛生兵”として戦地へ行きたいと言うデズモンド、結果的にトーマスは後押しすることになります。
ドロシー
病院で看護師として働く、若く美しい女性ドロシー。
看護師姿の登場シーンは、ブラウンの巻き髪にブルーの瞳が非常に美しい!
あれには…一目惚れしてしまいますね。
1942年にデズモンドと結婚して、1944年には彼が戦争に行くわけですから…彼女はとても寂しくて辛かったことでしょう。
それでも彼が奇跡的に生還し、その後の45年は一緒にいられたので良かったのかもしれません。
最後は“自動車事故”で亡くなったことに少しびっくりしましたが、それよりもその2年後にデズモンドが再婚していることの方がビックリしました。
ハウエル軍曹
デズモンドたち新米兵士の訓練を任されているハウエル軍曹。
登場から笑わせてくれます。
彼を演じる“ヴィンス・ヴォーン”はアメリカのコメディアンです。
最近ではApple TV+のオリジナルドラマ「バッド・モンキー」に出演していました。
インディアンの真似をしたり“キンタマ二等兵”とか言ったり、訓練シーンでは笑わせてもらいました。
上官からの命令でデズモンドにも厳しく指導しますが、本当は彼のことを気の毒に思っているように感じます。
裁判のシーンなんかでは、ハウエル軍曹の顔が印象的でした。
そんな彼も、さすがに“ハクソー・リッジ”では冗談を言ってる場合ではありません。
結果的にハウエル軍曹は、デズモンドがいなければ生還できませんでした。
真珠湾攻撃
デズモンドは、アメリカ陸軍に入隊した理由を「日本人が真珠湾を攻撃したことに衝撃を受けたから」と言います。
日本は真珠湾を攻撃せざるを得なかった…というか、そう仕向けられたと言われています。
なぜなら当時のアメリカ大統領“フランクリン・ルーズベルト”は、日本軍の真珠湾攻撃を無線傍受により前もって知っていたからです。
知っていながら真珠湾にいた自国の戦艦に伝えず、彼らを犠牲にして日本を攻撃する理由としたのです。
そして、日本人を“残酷な悪魔”のようにテレビや新聞で報道し、戦場で何の罪悪感もなく殺せるように仕向ける。
兵士はいつでもただの駒で、政府に騙され操られて捨てられます。
デズモンドの父親のトーマスは、第一次世界大戦でそれがよくわかったんだと思います。
戦争のルール
戦争にはルールがあり、そのひとつが「軍隊 vs 軍隊」です。
あくまで攻撃対象は軍隊や軍事施設であり、民間人や民間施設への攻撃は“国際法違反”となります。
皆さんは映画「パール・ハーバー」をご覧になったでしょうか?
あの映画で日本軍は、ハワイの病院や民間施設を攻撃しています。
しかし、そんな事実はなく日本軍は真珠湾のアメリカ軍の戦艦しか攻撃していません。
日本を悪く見せるための“プロパガンダ”です!
私は当時アメリカの映画館であのシーンを観て、気分を害したのをよく覚えています。
第二次世界大戦でアメリカは、東京大空襲や広島と長崎への原爆など民間人を大量殺戮しました。
あれは明らかな国際法違反であり、戦争ではなくただの“ジェノサイド”です。
ルーズベルトは、日本人の命など家畜以下の虫ケラのように思っていたわけですから…。
我々は多くの尊い命を失ってしまいました。
殺人を正当化する戦争なんて、二度としてはいけない…するべきではないと思います。
戦争はビジネスなんだよね…
金儲けのために意図的に戦争を起こすなんて…
前田高地の戦い
1945年4月25日から5月6日まで続いた、前田高地での激戦。
日本軍は約3,000人の死者を出し、アメリカ軍は800人中324人しか生き残らなかった。
また、浦添市の人口は約9,200人でしたが…約半数の4,112人の住人が犠牲になったと言われています。
映画でも、その激しい戦闘がリアルに表現されていました。
戦艦からの砲撃の威力が凄まじくて、あんなの喰らったらひとたまりもないなと恐怖しました。
住民も日本軍からスパイ容疑をかけられて殺されたり、誰が敵で誰が味方なのかわからない状況だったようです。
日本人が日本軍に殺されてどうするんですか?!
戦争は、やはり人をおかしくしてしまうんですね…。
リアリティ
メル・ギブソン監督は、CGを使わないリアリティにこだわりました。
特殊効果により至近距離で爆発を撮影し、ワイヤーアクションで爆風に吹き飛ばされるシーンを撮影した。
火炎放射器で、全身が炎に包まれるシーンもCGを使わないという徹底ぶり。
足がもげるシーンや内臓が飛び出ている描写など、目を背けたくなるほどリアルでした。
しかし、それが壮絶な戦場でのリアルな惨状なのでしょう。
監督はリアリティを追求することによって、戦争の惨さや悲惨さを伝えたかったのでしょうか。
こんなことを決して繰り返してはならないと…。
評価
Rotten Tomatoesでは、トマトメーター(批評家)84% ポップコーンメーター(観客)91%
metacriticでは、メタスコア(批評家)71/100 ユーザースコア(観客)8.3/10
IMDbでは、IMDbレーティング8.1/10 ユーザー評価8.2/10
どのサイトも高めの評価を出しています。
“アンドリュー・ガーフィールド”の演技や、戦闘のリアリティが高く評価されていました。
何よりこれが実話ということが、多くの人に衝撃を与えたのではないでしょうか。
まとめ
日本では、2017年に公開された“メル・ギブソン”監督の映画「ハクソー・リッジ」
「良心的兵役拒否者」である“デズモンド・ドス”が、銃も持たずに戦争に行き「衛生兵」として前人未踏の偉業を成し遂げた奇跡の物語です。
神を信じその教えを守り続けた男、彼の“信念”はどんなに非難されようと揺らぐことはなかった。
軍では上官や仲間の兵士から多くのイジメや嫌がらせを受けたが、彼はじっと耐えて耐えて耐え抜きました。
そんな“臆病者”と呼ばれた男が、「沖縄・前田高地の戦い」で75人もの負傷者を救い出すのです。
敵は日本軍なので複雑な気持ちになりますが、デズモンドの物語なので彼が撃たれないことを祈ってしまう。
敵味方は関係なく、負傷者は誰でも助けていたというデズモンド。
“信念”を貫き通した男の「奇跡の実話」を…ぜひご覧いなって観てください!
最後まで読んでいただきありがとうございます
“信念を曲げたら僕は生きていけない”