誰もが知るゲーム「テトリス」
多くの人が過去に夢中でプレイした経験があるでしょう。
この映画はパズルゲーム「テトリス」の開発秘話…ではなく、その販売権を巡る実話の映画化です。
冷戦時代の旧ソビエト連邦を舞台に起こったこの出来事は、私も含めほとんどの人が知らなかったと思います。
後に世界で大ヒットする、“落ちゲー”の元祖「テトリス」がどのようにして世界中に広まったのでしょうか!?
テトリス懐かしいな
何時間も夢中でやったよね
テトリスとは
テトリスは、1984年にソビエト連邦のコンピューター科学者“アレクセイ・パジトノフ”が考案したゲームの名称。
テトリスは4つのブロックのパズルであるため、ギリシャ語で“4”を示す「テトラ」とパジトノフが好きなスポーツの「テニス」を合わせて「テトリス」と名付けられた。
元祖“落ちものゲーム”(落ちゲー)「テトリス」は、現在までにダウンロードも含め5億本以上を売上げている。
映画「テトリス」
映画.com より
「テトリス」は、2023年公開のAppleオリジナルのイギリス・アメリカ製作のドラマ映画。
STORY
1980年代後半、日本在住のオランダ人ゲームクリエイターのヘンク・ロジャースは、「テトリス」というソビエト連邦のコンピューター科学者アレクセイ・パジトノフが考案したパズルゲームの存在を知る。ヘンクは「テトリス」の販売権を得て世界に広めようとソ連に飛びパジトノフに会う。しかし権利の獲得は一筋縄とはいかず、ライバル会社やソ連の国営企業、KGBまでも巻き込んだ騒動にまで発展していく。
私は「テトリス」が旧ソ連で誕生したことさえ知りませんでしたから、この映画で描かれた権利にまつわる騒動など知る由もありませんでした。
世界的な大ヒットゲームだけに、非常に興味深い内容でした。
ときどき画像がファミコンのように8ビットになる演出は面白かったです。
観終わってから「テトリス」のBGMでお馴染みのロシアの民謡“コロブチカ”(コロベイニキ)が頭から離れません…
Apple Original Films「テトリス」は、Apple TV+で配信されています。
監督:ジョン・S・ベアード
上映時間:118分
騒動があったんだね
“テトリス事件”とも言われてるよ
主演
タロン・エガートン(ヘンク・ロジャース役)
タロン・デヴィッド・エガートンは、イングランド出身のウェールズ人俳優。
2011年にTVドラマでキャリアをスタートし、2014年映画「キングスマン」で知名度を上げる。
2016年「SING/シング」のジョニー役で第77回ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。
2019年エルトン・ジョンの伝記ミュージカル映画「ロケットマン」で主演を務めた。
タロン・エガートンのことは、今まで知りませんでした。経歴を見ても知名度はそれほど高くないと思います。
「テトリス」の演技は良かったのではないでしょうか。日本語は下手でしたが…。
アレクセイ・パジトノフ
アレクセイ・パジトノフは、モスクワ出身でモスクワ航空大学でコンピューターを学びました。
1979年にソビエト社会主義共和国連邦科学アカデミーのコンピューター部門で働きます。
ここで新規ハードウェアの性能試験をしながら、同僚の力も借りて「テトリス」を開発した。
当時、科学アカデミーでパジトノフが使用していたのはソ連製の「エレクトロニカ60」というコンピューターです。
OSはTUI(テキストユーザインターフェース)のため、文字と記号しか使えず[ ]でブロックを表現していました。
「テトリス」はすぐに職員に広まり、科学アカデミーで流行ります。その噂はどんどん広がり、1986年頃にはソ連全土に広がりました。
ヘンク・ロジャース
ヘンク・ロジャースは日本に住むオランダ人ゲームクリエイターで、横浜市に株式会社BPS(Bullet-Proof Software)を設立し、ファミコン用のゲームを制作していました。
1984年、日本初のRPGと言われる「ザ・ブラックオニキス」を発売し大ヒットとなる。
1988年、アメリカ・ラスベガスの見本市で「テトリス」と運命的な出会いをする。
ヘンクは直ぐに「テトリス」の虜となり、“アタリ”の子会社の“テンゲン”からサブライセンスを取得し、ファミコン用ソフト「テトリス」を発売しました。
その後、ヘンクは任天堂から新型の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」が発売されることを知ります。
「ゲームボーイ」に「テトリス」はぴったりだと思ったヘンクは、携帯ゲーム機に対するライセンスを確認するためモスクワへ飛びます。
ライバル
「テトリス」に可能性を感じたのは、もちろんヘンク・ロジャースだけではありません。
販売権の獲得には、強力なライバルがいました。
ロバート・スタイン
ロンドンのソフトウェア企業、アンドロメダの営業マン“ロバート・スタイン”
ハンガリーで「テトリス」を見つけたスタインは、初めに販売権の取得に動きました。
ケビン・マクスウェル
デイリー・ミラー紙など新聞者やテレビ局などからなる、イギリスでメディア帝国を築き上げたメディア王“ロバート・マクスウェル”の息子でありミラーソフト社長“ケビン・マクスウェル”
ミラーソフトはアンドロメダ社からサブライセンスを受けていました。
ロバート・マクスウェルはソ連の上層部とも親交があり、映画ではソ連の最高指導者“ミハイル・ゴルバチョフ”が登場します。
ELORG
ELORG(エルログ)、正式名 Elektronorgtechnica(エレクトノログテクニカ)は、1971年から1991年までソ連のコンピュータのハード・ソフトウェアの輸出入を管理していた国営企業。1991年から2005年は民間企業だった。
「テトリス」は、このELORGが販売権を所有しており、その責任者が会長の“ニコライ・ベリコフ”でした。
ベリコフが、どこにライセンスを与えるかという権限を持っています。
ですから、彼を攻略するのが“販売権”を取得する鍵になります。
見どころ
見どころは、やはりヘンク、スタイン、マクスウェルの三つ巴の販売権争奪戦でしょう!
販売権を得たと思えば、実際はベリコフが許可していなかったり…
実話なので結果はわかっているんですが、どうやって任天堂の手に販売権が渡るのか!?が非常に気になります。
もう無理じゃん!という状況からの作戦など、後半はドキドキハラハラさせられます。
初めに語ったように、時たま映像が8ビットのドット画になるのが面白い。
最後はまあ、映画的には盛り上げたくて導入した演出でしょう。。。
「テトリス」は“世界中に広まり巨大な利権になる”と3人は確信していたからこそ、その姿は必死そのもので面白いし物語に引き込まれます。
任天堂のゲームボーイ版「テトリス」が発売される前に、こんな事件があったなんてほとんどの人が知らないと思います。
ぜひ、多くの人に観て欲しい作品です!
ヘンクたちのその後
皆さんご存知の通り、1989年にゲームボーイ版「テトリス」が発売され世界中で大ヒットします。
世界累計424万本を売り上げ、ゲームボーイで最も売れたソフトとなりました。(現在はポケモンに抜かれている)
1991年ソ連の崩壊とともにパジトノフは家族と一緒にアメリカに脱出し、ヘンクのBPS社が彼を社員として迎え入れました。
「テトリス」は大ヒットしましたが、パジトノフに著作権料は入っていません。
1995年に最初のライセンスが切れたことでやっと権利を手に入れ、翌年1996年にヘンクと共に「ザ・テトリス・カンパニー」を設立しました。
そして、2005年には民営化されていたベリコフの“ELORG”を1,500万ドルで買収し、「テトリスに関わる全て」の権利を取得することに成功したのです。
今でも仲良くやってるんだね
「テトリス」はお互いの人生を大きく変えたからね
まとめ
今回は、映画「テトリス」をご紹介させていただきました。
東西冷戦時代のソ連で実際に起こった出来事を映画化した作品。
あの誰もが知る“落ちゲー”「テトリス」の誰も知らない舞台裏!
アレクセイ・パジトノフが生み出したゲーム「テトリス」の“販売権”を巡る争い。
物語が進むに連れ、どんどんスリリングな展開へと向かっていきます。
ヘンク・ロジャースの日本人妻アケミを演じたのは“文音”(あやね)という女優で、彼女の父親はシンガーソングライターの長渕剛です。
映画でトーゴ・イガワという役者が演じる、任天堂の社長である山内溥がそっくりで笑えます。
パジトノフ本人もそっくりだと褒めていました。笑
私が以前に紹介した“エア・ジョーダン”誕生秘話を映画化した「AIR/エア」と同じく、この「テトリス」も結果がわかっているのに面白くて目が話せない作品です。
時間ができた時にでも、観てみてはいかがでしょうか!
きっと、観終わったら“コロブチカ”が頭から離れなくなるはずです。
コロブチカ/手回しオルガン
最後まで読んでいただきありがとうございました
テンテレ♪テンテレ♪