2023年の4月6日にNETFLIXで配信されたブラックコメディドラマ「BEEF/ビーフ」
アメリカのテレビ界のアカデミー賞である“エミー賞”を8部門受賞し、“ゴールデングローブ賞”では3部門を受賞しました。
数々の話題を呼んだこの作品ですが、私は最近までその存在すら知りませんでした。
あの有名な辛口映画評価サイト“ロッテントマト”の評価は、なんとトマトメーター98%と非常に高評価だったのです。
全10話で1話30分強のミニシリーズということもあり、サクッと観てみることにしました。
ビーフって…牛肉?
「不満」や「文句」ていう意味もあるんだよ
NETFLIXシリーズ「BEEF/ビーフ」
NETFLIX公式Xより
BEEF/ビーフ(邦題:BEEF/ビーフ〜逆上〜)は、映画製作・配給会社“A24”が製作しNETFLIX配信のアメリカのコメディドラマ・テレビミニシリーズ。
STORY
仕事が上手くいかず崖っぷちの工事事業者ダニーは、ビジネスに成功し素敵な家と家族がある女性エイミーと些細なことで言い合いになる。怒りが収まらない二人は、そのまま公道であおり運転合戦を繰り広げる。その後も二人のいがみ合いはどんどん加速し、やがて周りの人たちの人間関係や人生をも巻き込んでいく。
監督:ジェイク・シュライアー、HIKARI、イ・サンジン
視聴時間:30〜39分
ウォーキング・デッドの“グレン役”の人だ!
女の人は“コメディアン”らしいよ
A24
A24(エートゥエンティフォー)は映画業界出身の3人によって、2012年に設立されたアメリカのインディペンデント系エンターテインメント企業。
ニューヨークを拠点とし、映画やテレビ番組の制作・出資・配給を専門としている。
A24はアートワークを重視しているため、センスが良くお洒落な作品が多い。
映画祭などで世界の将来性のある若手監督を見つけてきて、彼らに“自由に撮らせる”など攻めた作品作りをするのも特徴のひとつ。
2016年「ムーンライト」2017年「レディ・バード」2023年「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」など、多くの賞レースで注目され受賞をする作品を生み出している。
“A24”という名前は、設立者の一人ダニエル・カッツがイタリアの高速道路「アウストラーダA24」を走行中に構想を思いついた事に由来する。
エピソード
No. | 日本語タイトル | 英語タイトル | 時間 |
---|---|---|---|
1 | 鳥は歌わず、痛みにうめく | The Birds Don’t Sing, They Screech in Pain | 39分 |
2 | 生きる喜び | The Rapture of Being Alive | 33分 |
3 | 心に巣くう叫び声 | I Am Inhabited by a Cry | 35分 |
4 | 一度に全部は無理でも | Just Not All at the Same Time | 36分 |
5 | 奥深くに隠れた生き物 | Such Inward Secret Creatures | 34分 |
6 | 誰もが魔法の円を描く | We Draw a Magic Circle | 36分 |
7 | 私は鳥かご | I Am a Cage | 37分 |
8 | 最初に選んだ物語 | The Drama of Original Choice | 35分 |
9 | 偉大なる製作者 | The Great Fabricator | 30分 |
10 | 光の形 | Figures of Light | 33分 |
登場人物
名前 | 役者名 | 説明 |
---|---|---|
ダニー・チョー | スティーブ・ユァン | 何事も上手くいかない韓国系アメリカ人の男性(主人公) |
エイミー・ラウ | アリ・ウォン | いくつかの事業で成功している中国とベトナムの血を引く女性(主人公) |
ジョージ・ナカイ | ジョセフ・リー | 日系の彫刻家でエイミーの夫 |
ポール・チョー | ヤング・マジノ | いつも何も考えずに行動するダニーの弟 |
アイザック・チョー | デイヴィッド・チョー | ダニーとポールの従兄弟で刑務所から釈放されたばかり |
中井フミ | パティ・ヤスタケ | ジョージの母親 |
ジョーダン・フォースター | マリア・ベロ | ホームセンターチェーン店のオーナーで大富豪 |
ナオミ | アシュリー・パーク | ジョーダンの義理の妹でエイミーの隣人 |
ミア | ミア・セラフィーノ | エイミーの会社の従業員 |
ジューン | レミー・ホルト | エイミーとジョージの娘 |
エドウィン | ジャスティン・H・ミン | 韓国の教会の賛美指導者でヴェロニカの夫 |
ヴェロニカ | アリッサ・ギヒ・キム | ダニーの元恋人でエドウィンの妻 |
アメリカのドラマなのにアジア系の役者ばっかりなんだね
でも人種問題がテーマではないんだよね
感想
このドラマは、“面白かった”という人と“観ていてしんどかった”という人に別れると思います。
単純に「些細なことでいがみ合う二人」のブラックコメディとして観れば面白いだろうし、「いつまでもいがみ合う二人を観ているとしんどい」と思う人もいるでしょう。
最初のきっかけが、「駐車場でバックしたらぶつかりそうになった」という“些細なこと”ですからね。
お互い、もしくはどちらかが冷静になって引けば終わる話をずっと引っ張っている。
観ていると“もういいじゃん”という気持ちに誰もがなると思います。
些細なことから始まり、人がどんどん不幸になっていく物語。
ある意味これは誰にとっても“いい教訓になる”ドラマだと思います。
ダニー・チョー
ダニーはおせっかいで、根はいい奴だと思います。
カッとなりやすいが、例えば子供を傷つけるかもしれないとなるとすぐ冷静になれる。
本当はくだらないから終わりにしたいが、相手に煽られるとまたやり返してしまう。
運が悪いのか何なのか、上手くいかないことで自暴自棄になっている気がします。
ダニーが教会で歌を歌っていましたが、ダニー役の“スティーブ・ユァン”は歌が上手いんですね。
終始感情が不安定で演じるのは大変だったと思いますが、見事にこの作品でエミー賞の主演男優賞を受賞しました。
エイミー・ラウ
エイミーは顔が腹立ちます。笑
あの顔で煽られたら、けっこうムカつきそうです。
彼女のクラクションと“The Finger”(中指立て)が、そもそもの事の発端でしょう。
あのクラクションの鳴らし方には悪意があるし、わざわざ停まって中指を立てる必要はないと思います。
ビジネスで成功し素敵な家も建てたのに、夫との問題があるからストレスであんなことをしたのでしょうか。
しつこいし平気で嘘をつくズルい女で、観ていてイライラしてきました。
ムカつく女を見事に演じた彼女もまた、エミー賞の主演女優賞を受賞しました。
ポール・チョー
ダニーの弟ポールは、馬鹿だから笑えます。
仮想通貨で簡単に億万長者になれると思っているし、出会い系アプリでやすやすと騙される。
考えもせず、直ぐに行動するから失敗する。
ダニーはそんな弟が可愛くて、自分が側にいないとダメだと思っていたんでしょう。
本人は自立したいと思っていたんでしょうが、人生を舐めているから無理でしょうね。
ポールは身体ばっかり鍛えちゃってね
頭悪いんだよな〜
ジョージ・ナカイ
玉の輿に乗った、自称芸術家の専業主夫です。
やっぱり2世は才能がなくダメですね…。
子供を大切にするいい夫のようですが、浮気を“魂いの繋がり”と言う。
最後にはやらかしてくれましたが、彼の馬鹿っぷりはけっこう笑えました。
アイザック・チョー
アイザックは口が達者で顔も広いので、真面目に働けば成功できそうな男です。
しかし、コツコツ仕事をするタイプではありません。
すぐに手を出すし、手っ取り早く稼ぎたいと思うタイプ。
仲間想いでいい奴なんですが、シャバに出てもまた犯罪を繰り返すような男です。
この作品は各エピソードのタイトルバックに独特な絵が描かれているんですが、それを描いているのがアイザック役の“デイヴィッド・チョー”なんです。
そんな彼はポッドキャストで、マッサージの際に施術している女性に“オーラルセックスを強要した”というエピソードを話して炎上していました。
チョーは“作り話”だと否定していましたが、そう簡単には収まらなかったようです。
アンガーマネジメント
このドラマは、“感情に任せて行動してもいい結果は生まれない”ということを描いていると思います。
一瞬カッとなっても一呼吸おけば、怒りは抑えることができます。
“Anger Management”(アンガーマネジメント)は非常に大事ですよね。
怒りや復讐といった誰かを憎む感情は、周りの人間にも影響を与えるのでしょうか。
この作品では憎しみの感情を持ったダニーとエイミーの周りの人間が、伝染するかのように次々と不幸になっていきます。
何か波長というか周波数的なものが、周りに影響を与えるのかもしれません。
話し合い
ダニーとエイミーは、ちゃんと話し合いをする必要がありました。
試みようとしたんですが、どちらかが煽ればもう一人もそれにのってしまう。
お互いがどんどん「マイナスの方向に向かっている」のをわかっていながら止められない。
冷静に話し合ってお互いを知れば、怒りは収まり和解できる。
最終的にこの物語は、それを我々に教えてくれます。
話し合いは大事だよね
人は話せばわかるからね
私の体験
私も“ROAD RAGE”(ロードレイジ)とまではいきませんが、運転のことで見知らぬ人と言い合いをしたことがあります。
20代前半でロサンゼルスに住んでいた頃、このドラマの舞台と同じ“LA郊外”での出来事です。
私が広い交差点で左折待ちをしていて、信号が黄色から赤になるギリギリぐらいで左折しました。(アメリカは右側通行)
その時に、直進してきた車とあわや接触しそうになったんです。
「危なかったなぁ」と思っていると、さっき接触しそうになった車が猛スピードで私を追いかけてきました。
そこが目的地だったのか覚えていませんが、私は近くの駐車場に入り車を停めました。
すると、メキシコ系アメリカ人っぽい男が降りてきて「あぶねーだろ!」と言ってきたので「信号は赤だっただろ!?」と返しました。
その男は「いや、黄色だった」と言います。
そのまま続けても“水掛け論”になるだけだと私は思ったし、相手も私が日本人ということで“話があまり通じてない”と感じたのか、それ以上は口論することなく終息しました。
彼は隣に彼女を乗せてるのに、わざわざ私を追いかけてきましたからね…
まさに、何も考えずに“怒り”という感情に任せた行動です。
「BEEF/ビーフ」を観て、この出来事を思い出しましたよ。
ロードレイジとは、車の走行時の追い越しなどに対して“あおり運転”や“進路妨害”などの報復行為をすること
評価
Rotten Tomatoes(ロッテントマト)では、トマトメーター(批評家)98% オーディエンス(観客)87%と、かなりの高評価です。
metacriticでも、メタスコア(批評家)86/100 の“MUST-WATCH” ユーザースコア(観客)7.6/10と、こちらも高評価です。
どちらも批評家の評価が特に高いという結果になりました。
アジア人とか関係なく、誰もが陥るかもしれない出来事だからでしょうか。
非常に“いい教訓”になっていると、視聴した多くの人が感じるでしょう。
シーズン2
「BEEF/ビーフ」はシーズン2の製作が既に決まっているらしく、プロデューサーのイ・ソンジンはキャストを集めているようです。
その中には、“ジェイク・ギレンホール”や“アン・ハサウェイ”の名前も上がっている。
どうやらシーズン2は、シーズン1のような展開ではなく2組のカップルに芽生えた“確執”を描いた作品になるみたいです。
「SHOGUN 将軍」と同じように“リミテッド・シリーズ”の予定が、予想外の大ヒットにより続編の製作が決定したんだとか。
楽しみに完成を待ちましょう!
まとめ
日常に起こりうる“不満”や“文句”をテーマに、あおり運転がきっかけで不幸が連鎖していく物語。
ブラックコメディ・ドラマ「BEEF/ビーフ」は、NETFLIXで見放題となっています。
全10話のシーズン1ですが、1話30分ちょっとの“ミニシリーズ”なので気軽に観れます。
サクッと1日か2日ぐらいで観れてしまうので、お休みの日にでも観てみてください。
エミー賞8部門、ゴールデングローブ賞で3部門の受賞を始め、数々の賞レースでノミネートされ受賞をしています。
誰もが陥るかもしれない状況や感情のコントロールなど、このドラマを観て“考えること”や“気づくこと”はたくさんあると思います。
“アンガーマネジメント”や“話し合い”の大切さに気づくでしょう。
彼らの終わりなき“報復行為”にしんどくなるかも知れませんが、とにかく結末まで観てもらいたい。
そして、彼らのようにならないように“教訓”として覚えておきましょう。
ぜひ、一度ご視聴してみてはいかがでしょうか!
最後まで読んでいただきありがとうございました
“怒り”は一時的な意識状態にすぎない