今回ご紹介するのは、NETFLIX製作のドキュメンタリー映画です。
1990年代にアメリカのカリフォルニア州・シアトルで実際に起こった“連続銀行強盗事件”
犯人はまるで映画のように特殊メイクをしていたことから、FBIは彼に“ハリウッド”というコードネームをつけました。
FBIをあざ笑うかのように、何度も銀行強盗を繰り返す“ハリウッド”
彼は一体どんな人物なのか?
何が彼を犯罪に駆り立てていたのか?
“ハリウッド”の人物像に興味が湧きました。
原題は“How to Rob a Bank”
“銀行強盗のやり方”だね
映画「スコット・スカーロック:ハリウッド・バンディットと呼ばれた男」
Filmarks & JustWatchより
スコット・スカーロック:ハリウッド・バンディットと呼ばれた男(原題:How to Rob a Bank)は、2024年に公開されたNETFLIX製作の犯罪ドキュメンタリー映画。
STORY
1990年代、アメリカのカリフォルニア州・シアトルで起きた“連続銀行強盗事件”。犯人は特殊メイクをし誰も傷つけず、いとも簡単に犯行を重ねていた。そんな犯人の正体は頭が良く、ツリーハウスに住む意外な人物だった。FBIにより“ハリウッド”とコードネームを付けられた犯人は、最後の大仕事を決意し実行するのだが…
映画はスコットの友人や家族、当時のFBI捜査官やシアトル警察のインタビュー、スコットの記録映像と手記、再現映像と絵コンテのようなアニメーションで展開していきます。
非常にわかりやすく観やすいドキュメンタリー映画です。
監督:スティーヴン・ロバート・モース, セス・ポージェス
上映時間:87分
ただお金が欲しかったわけではなさそうだね
確かに、“ロビンフッド”的なこともしていたしね
感想
“Live Free or Die” (自由に生きる さもなくば死を)
彼は自由を求めていました。
多くの人が歩む、普通の人生が嫌だったのでしょうか。
ツリーハウスに住み、自然と共に暮らしていました。
“レールに乗った人生が嫌だ”とか、“他人とは違った人生を歩みたい”という気持ちは私にもあります。
彼の行動力は素晴らしいんですが、行く方向を間違えてしまいました。
“スコット・スカーロック”それが彼の名前です。
挫折
スコットは大学で医学を専攻し医者になれるほど優秀だったんですが、勉強しているうちに金儲けの方法を思いついてしまいます。
それは、“クリスタル・メス”(覚醒剤)を作ることでした。
彼の作り出すクリスタル・メスは純度が非常に高く、評判が良くもてはやされました。
ある時、薬品を盗むために大学のラボに忍び込んだのがバレて退学になる。
そこからスコットは道を踏み外していきます。
Breaking Bad(ブレイキング・バッド)
“クリスタル・メス”製造で頭に浮かんだのは、アメリカドラマの「ブレイキング・バッド」です。
私が今まで観てきた海外ドラマの中でも、1,2を争う面白さの傑作ドラマ!
STORY
ニューメキシコ州アルバカーキ。肺がんのため余命2年と宣告された高校の化学教師“ウォルター・ホワイト”は、残される家族のために財産を残そうと自身の化学の知識を活かしドラッグを精製する。ウォルターの作り出す“クリスタル・メス”は純度99.1%というあり得ない程の高純度だった。売り捌くツテのないウォルターは、かつての教え子である“ジェシー”を相棒に深い闇の世界へと落ちていく。
このドラマ最高だね!
笑えるし緊迫する展開がヤバい!
闇の世界に踏み込んで行くほど、ウォルターの顔が変化していきます。
ウォルターを演じた“ブライアン・クランストン”とジェシー役の“アーロン・ポール”の演技が素晴らしい!
“Breaking Bad”とは、「道を踏み外す」という意味です。スコットもウォルターと同じく道を踏み外しました。
2人共“クリスタル・メス”を精製し、かなりの高純度であった。
しかし、ウォルターはドラマですがスコットは現実です。
銀行強盗
売人が殺されたことでスコットは“ドラッグ・ビジネス”から足を洗いましたが、同時に収入源を失ってしまいます。
そこで、彼が次の収入源に選んだものが“銀行強盗”でした。
普通はそんな展開になりませんよね…
スコットが“銀行強盗”をしようと思ったキッカケ、“これならいける”と思ったものがまた凄いんです。
POINT BREAK(ハートブルー)
“パトリック・スウェイジ”と若き日の“キアヌ・リーブス”が主演で、1991年に公開されたアクション映画「ハートブルー」
私は、この映画が大好きで何度も観ています。
主人公たちと同じく、私もカリフォルニアでサーフィンをしていたので特にお気に入りです。
STORY
FBI捜査官の“ジョニー・ユタ”は、ロサンゼルスのベニス・ビーチで多発する銀行強盗を捜査する任務に就いた。強盗団がサーファーであることを推測し、潜入捜査としてサーファーに成りすましリーダーの“ボーディ”たちに近づく。サーファーたちとフットボールやサーフィンで絆を深め、やがて女性サーファーと恋仲になっていった。FBIと強盗という真逆の立場であるジョニーとボーディ、友情と使命に揺れ動くふたりの結末は…!?
この映画は最高にクールだよね!
銀行強盗とサーフィンという組み合わせもクール!
強盗団は“ロナルド・レーガン”や“リチャード・ニクソン”など、歴代大統領のマスクを被って銀行強盗をしています。
この映画を観たスコットは、銀行強盗をやることを決意し成功する方法を模索します。
映画を観て「自分にもできる」と思って、実際に行動に移すのが凄いですよね。
しかも、それを収入源とすると決めてやるわけですから余程の自信があったのでしょう。
初めての銀行強盗
スコットと彼の友人であるスティーブとマークは、本当に“銀行強盗”を実行します。
最初は映画と同じように元大統領のマスクを被り犯行を行いましたが、計画通りに上手く進まずギリギリの逃走となりました。
しかし、スコットは「より綿密な計画」「よりスムーズ」にと、更に銀行強盗にのめり込んでいきます。
2回目からは、警察や銀行周辺の動きを時間をかけて調査・分析し、ハリウッドの特殊メイクを真似て変装して挑むことになります。
エスカレート
初めは窓口での犯行で2万ドル程度だったんですが、スコットはそのうち金庫を狙うようになります。
奪う金額は10万ドル以上になっていきました。
警察の裏をかき同じ銀行を何度も襲ったり、証拠隠滅や資金洗浄も巧妙になっていきました。
銀行に単独で入り金庫まで案内させて金を奪っていましたが、フロアの人は逃げれるし通報されるリスクもかなりあったと思います。
それなのになぜ成功していたのか?
スコットの心理操作だったのかもしれません。
ロビン・フッド
スコットは銀行から奪った金を“環境保護団体”に寄付したり、困っている人にばら撒いていました。
自らを“ロビン・フッド”と重ねていたようです。
おそらく、彼には「悪いことをしている」という認識はさほどなかったのだと思います。
我々は普段から“税金”という名目でお金を搾り取られています。
何に使われているかもわからない、なぜ取られるのかもわからない。
スコットが何を考えていたのかわかりませんが、そんなことを考えれば銀行強盗の罪悪感も薄まるかもしれません。
ハリウッド
FBIもシアトル警察もハリウッドを捕まえる事ができず、捜査が難航したためマスコミを使い大体的に報道しました。
“ハリウッド”の名は有名になり、こうなると犯行が難しくなります。
この時点ではまだハリウッドが何者なのかもわからず、全く手がかりがないのも凄いと思います。
銀行強盗の重圧
盗んだお金で世界中を旅行したり自由を謳歌していたスコットですが、次第にストレスで心を閉ざしたりと変化していきました。
報道されたことにより「捕まるかもしれない」というリスクがストレスになったのでしょう。
銀行強盗をしているという“罪悪感”が、彼を次第に追い詰めていったのかもしれません。
確かに、家族や周りの人間に嘘をつき続けるのはストレスだと思います。
Judgment Day(審判の日)
スコットは自分が“道を踏み外した”ことに気づき、「一晩に3つの銀行を襲う」大仕事を計画します。
“1,500万ドルを奪い元の生活に戻る”という最後の仕事。
しかし、この日がスコットたちにとって審判の日“Judgment Day”となります。
この仕事をやるかやらないかが“運命の分かれ道”だったと思います。
「次で最後にしよう」ではなく「もうやめておこう」が正解なんですね。
HEAT(ヒート)
1995年公開のアル・パチーノとロバート・デ・ニーロ主演のクライムアクション映画「ヒート」
銀行強盗をして街中で“映画史に残る銃撃戦”と言われるシーンがあります。
STORY
犯罪組織のボスであるニール・マッコリーは、仲間と現金輸送車を襲い警備員を射殺してしまう。LA市警のヴィンセントはこの事件を担当し、家庭を犠牲にしてまで執拗にニールを追う。逃げるニールと追い詰めるヴィンセント、やがて二人に運命の直接対決の時が訪れる。
アル・パチーノとデ・ニーロがかっこいい
緊張感ある駆け引きがいいんだよね
激しい銃撃戦と二人の駆け引きが面白いこの映画。
別の映画の記事を書いているのに、久々に観たくなってきました。
スコットとスティーブも当時、この映画を観ていたようです。
銀行強盗の後の激しい銃撃戦で、撃たれる犯人たちを観て“これだけは勘弁だな”と…
“運命”は着々と彼らに近づいていました。
スコット・スカーロック
頭が良く優秀だったスコットは窮屈な人間社会を嫌がり、自然と共に自由に生きたかったのだと思います。
“スリル”を求め“リスク”を恐れず行動し、やがて道を踏み外していく。
彼の知識をもっと別の方向に使っていれば…と悔やまれます。
最後はスコットに逃げ切って欲しかった。
ツリーハウスに戻れれば逃げ切れるんじゃないか、という気持ちになりました。
そして…“ハリウッド伝説”は幕を閉じました。
評価
Rotten Tomatosでは2024年6月29日現在、トマトメーター(批評家)100% オーディエンススコア(観客)78%となっています。
metacriticでは、メタスコア(批評家)はまだレビューが少な過ぎて未定となっており、ユーザースコア(観客)10/10となっています。
ロッテントマトは批評家が100%という超高評価ですが、metacriticと同様にまだレビューが少ないです。
まとめ
90年代にシアトルで実際に起きた“連続銀行強盗事件”の主犯である“ハリウッド”を追った、NETFLIXドキュメンタリー映画「スコット・スカーロック:ハリウッド・バンディットと呼ばれた男」
「日本語タイトルが長過ぎる」この作品は、NETFLIXで見放題となっています。
非常に興味深い彼の人物像と犯行の仕方をわかりやすく説明しています。
スコットたちは1992年から1996年の4年間で19の銀行を襲い、230万ドル(約3億6千万円)以上を盗みました。
道を踏み外してしまった男たちに最後に訪れる運命…
90分程度の長さなので、たまにはドキュメンタリー映画でも観てみてはいかがでしょうか!
最後まで読んでいただきありがとうございました
Live Free or Die