2024年に公開された「侍タイムスリッパー」は、公開当初から話題となり上映館を拡大していきました。
超低予算の自主制作映画が異例の大ヒットを飛ばし、日本アカデミー賞で“最優秀作品賞”まで受賞してしまった。
タイトルから“侍がタイムスリップする話”だというのはわかるが、「どこへ行って何をするのか?」は知りません。
なぜそんなに大ヒットしたのか…を確かめるために、Amazon Prime Videoで視聴してみることにしました。

どんなお話なのかね



侍がタイムスリップね〜


映画「侍タイムスリッパー」
「侍タイムスリッパー」公式Xより
侍タイムスリッパーは、2024年8月17日に公開された日本の時代劇コメディ映画。
監督の“安田淳一”が私財を投げうって集めた2,600万円で製作し、興行収入は約10億円という大成功を収めた作品。
第67回ブルーリボン賞作品賞、第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。
STORY
幕末の京都、会津藩士・高坂新左衛門は、同胞・村田左之助と共に長州藩士・山形彦九郎を討とうとしていた。高坂と山形の一騎討ちの最中、雷に打たれた高坂は現代(2007年頃)の京都にある時代劇撮影所に“タイムスリップ”してしまった。戸惑う高坂は撮影助監督の“山本優子”や住職夫婦に助けられながら、時代劇の「斬られ役」として生きていくこととなる。順調にキャリアを積み重ねていった高坂は、大役のオファーを受けるのだが…。
監督:安田淳一
上映時間:131分



本物の侍が時代劇の“斬られ役”に…



“斬られた”ことなさそうだけどね…
監督
安田淳一
安田淳一は、京都府城陽市出身の日本の映画監督、プロデューサー、脚本家、米農家
大阪経済大学時代から映像製作を開始し、2013年の「拳銃と目玉焼き」でオリジナル映画作品の監督デビュー。
2017年に2作目の「ごはん」が公開され、米農家のリアルな現状と美しい水田を描きヒット作となった。
2023年に父親が逝去し、米農家と映画監督を兼業することとなる。
2024年に3作目の「侍タイムスリッパー」が単館上映からスタートしたが、話題を呼び結果的に全国300館以上で上映される大ヒットとなった。
安田は監督・脚本・撮影・照明・編集など、1人11役を務めたオリジナル作品である。
第48回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞し、その他にも多くの賞を受賞している。
米農家との兼業というのが凄いし、「ごはん」が観てみたくなりました。
「拳銃と目玉焼き」の内容も気になりますね。笑
上田慎一郎監督の「カメラを止めるな!」をリスペクトし、影響を受けて「侍タイムスリッパー」は製作されているようです。
主演
山口馬木也(高坂新左衛門 役)
山口馬木也(やまぐちまきや)は、岡山県出身の日本の俳優。
京都精華大学・芸術学部洋画学科を卒業し、1998年に日中合作映画「戦場に咲く花」で俳優デビュー。
2000年に蜷川幸雄演出の「三人姉妹」で舞台デビューし、同年公開の映画「雨あがる」で時代劇を学ぶ。
その後も様々な舞台やテレビドラマ、映画などを経験するが…その名が知れ渡ることはなかった。
2024年「侍タイムスリッパー」が異例に大ヒットを飛ばし、第67回ブルーリボン賞主演男優賞や第48回日本アカデミー賞主演男優賞などを受賞した。
主演作品の大ヒットにより出演オファーが殺到し、2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」で柴田勝家役で出演することが決定している。
山口馬木也さんはこの作品で初めて認識しましたが、“どこかで見たことあるようで見たことない”人ですね。
時代劇が似合う顔で、高坂新左衛門は良かったんじゃないでしょか。
かなり遅咲きの役者となりましたが、これから多くの作品でいい演技を見せてもらいたいですね。
キャスト
役名 | 役者名 | 説明 |
---|---|---|
高坂新左衛門 | 山口馬木也 | 会津藩士の侍だが、現代にタイムスリップしてしまう |
風見恭一郎 | 冨家ノリマサ | 時代劇のスターとして成功を収めた俳優だが… |
山本優子 | 紗倉ゆうの | 京都撮影所で助監督として働く女性 |
殺陣師 関本 | 峰蘭太郎 | 京都撮影所のベテラン殺陣師で、高坂に“斬られ役”の指導する |
西経寺住職 | 福田善晴 | 西経寺の住職で、高坂を自宅に住まわせる |
住職の妻 節子 | 紅萬子 | 住職の妻で、高坂の世話をする |
撮影所所長 井上 | 井上肇 | 京都撮影所の所長 |
錦京太郎(心配無用ノ介) | 田村ツトム | 時代劇の主役“心配無用ノ介”を演じる俳優 |
斬られ役 安藤 | 安藤彰則 | 時代劇の斬られ役の俳優 |
山形彦九郎 | 庄野崎謙 | 長州藩士の侍で、高坂との一騎討ちの際に雷に打たれる |


感想
この作品は、評判通り面白かったです!
本物の侍が、現代でまさか“斬られ役”をやるとは…面白いアイデアです。
でも、生きてるから本当に斬られた経験はなさそうですが…。
脚本が素晴らしくて、途中から更に面白い展開になっていきます。
最後のシーンは緊張感があって良かった。
高坂
山形との一騎討ちの際に雷に打たれ、現代にタイムスリップしてしまった高坂。
「雷に打たれてタイムスリップはしないだろ」と思いつつも、降り立ったのは現代の京都撮影所という奇跡。
最初から“コンクリートジャングル”よりかはいいかもしれない。
現代の世界を目にした時、もっと驚いてもいいのではないか。
ハイスピードで適応してしまう高坂ではあったが、観ていてそこまで気にならない程度ではある。
風見との最後の一騎討ちのシーンは、非常に緊張感があって良かった。
高坂を演じた“山口馬木也”さんは、これから忙しくなるのではないでしょうか。
風見
時代劇のスターであり、俳優として成功を収めていた風見。
この人が出てきてから、この作品は更に面白さを増していきます。
“昭和のスター”みたいな風貌が笑える。
回想シーンだけで済まされる彼の過去ですが、もう少しじっくり観たい気にもなった。
「顔が変わり過ぎだろ!」とツッコミたくなる程の変わり様。
“違う時代だった”というのが、面白い設定だったのではないでしょうか。
優子
京都撮影所で助監督をしていて、頭を打った高坂を助けた優子。
おっとりとした彼女は、実に“低予算映画”を感じさせるヒロインである。
芝居経験はかなり少ないが、安田監督の「拳銃と目玉焼き」に出演し「ごはん」では主演を務めている。
安田映画の常連女優と言えるでしょう。
このまま安田監督が大物監督になっていっても、彼女はずっと使ってくれそうな気がします。
特に印象は残らなかったんですが、「ごはん」ではどんな芝居をしているのか少し気になりますね。
関本
京都撮影所のベテラン殺陣師の関本。
この役は、時代劇や現代劇で“日本一の斬られ役・殺され役”と言われ、「5万回斬られた男」という異名を持つ“福本清三”氏が演じる予定でした。
しかし、2021年に福本氏が逝去したため…それは叶わぬ願いとなってしまいました。
そこで白羽の矢が立ったのが、福本氏と共に長年に渡って“東映剣会”で斬られ役を演じてきた男“峰蘭太郎”。
高坂に剣さばきの指導をする姿は、さすがと言えるような動きでした。
すぐに斬ってしまう高坂との稽古のシーンは笑える。
福本清三さんは、トム・クルーズの「ラストサムライ」で老武士を演じられていた方なんですね。
製作秘話
福本清三氏の逝去により企画自体が頓挫しそうになったが、この作品の脚本を気に入った東映京都撮影所に安田監督は呼び出されました。
そこにいたのは東映京都撮影所の名物プロデューサーや美術部や衣装部など、数々の時代劇を製作してきたメンバーたち。
彼らは「自主映画で時代劇をやる人がいたら普通は全力で止めるが、これは脚本がいいからなんとかならないかと皆んな集まっている」と言ってきた。
そんな彼らの協力もあり、本来なら2億円かかるような撮影が…たった2,600万円で製作できたのです。
製作費
安田監督は、自身の貯金1,500万円と愛車“NSX”を売却して得た500万円、文化庁の助成金600万円で2,600万円という製作費を集めた。
大成功を収めたわけですから、泣く泣く手放したNSXも買い戻すことが出来ますね。
もしくは、他の高級車でも何でも買えそうです。
エンドロール
エンドロールの最初に福本氏への献辞が出てきます。
“In Memory of Seizo Fukumoto”
安田監督は「きっと福本さんがご覧になったら、謙虚な福本さんのことだから“献辞なんかやめときなはれ”とおっしゃられると思い、英語なら読めないので気づかないだろうということで英文にした」と語っています。
評価
Rotten Tomatoesでは2025年4月6日現在、トマトメーター(批評家)100% ポップコーンメーター(観客)?%
metacriticでは、メタスコア(批評家)?/100 ユーザースコア(観客)?/10
IMDbでは、IMDbレーティング7.4/10 ユーザー評価7.4/10
ロッテントマトでの批評家は100%となってますが、まだ7件しか批評家が評価していません。
オーディエンスも3件のみなので、まだ表示されていない状況です。
メタクリティックは相変わらずで、日本映画はなかなか評価が出てきません。


まとめ
2024年の夏に公開された映画「侍タイムスリッパー」は、現在Amazon Prime Videoで視聴することが出来ます。
自主制作映画として西池袋の“シネマ・ロサ”1館のみの上映から始まり、口コミにより全国300館以上へと広がる大ヒットを記録した。
製作費2,600万円の低予算映画が、興行収入10億円を突破し日本アカデミー賞最優秀作品賞まで受賞してしまった。
その異例の大ヒットもうなずける面白さでした!
幕末の侍が現代(2007年頃)にタイムスリップしてしまうが、時代劇の“斬られ役”として生きていくことを決める。
クスッと笑えるシーンだったり、序盤の伏線を回収して後半に更に面白くなっていきます。
最後の一騎討ちの場面は、とても緊張感があって観入ってしまいました。
ぜひ、視聴してみてください!



最後まで読んでいただきありがとうございます



それがし…“斬られ役”にござる

