2023年に劇場公開された「AIR/エア」ですが、私はつい最近までこの映画の存在すら知りませんでした。
現在はAmazon Prime Videoの独占配信となっております。
世界中の多くの人たちに認知されている、あの“エア ジョーダン”の誕生秘話なんて興味深いですよね。
どうやってあの「伝説のシューズ」が誕生したのか。バスケットボールやマイケル・ジョーダンに興味がない人でも、少し気になる話ではないでしょうか。
なお、多少のネタバレが含まれますので、内容を知りたくない方は注意してください。
あの「エア ジョーダン」の誕生秘話なんだ!?
「ナイキが挑んだ大勝負!」これは熱い話だよ
エア ジョーダンとは
エア ジョーダン(Air Jordan)は、スポーツ用品メーカーのナイキ社とNBA選手マイケル・ジョーダンとのコラボレーションにより制作され販売されたバスケットシューズ。
“エア”はナイキのエアクッション技術とジャンプの対空時間が長かったマイケル・ジョーダンのニックネームの“エア”からきている。
1985年に発売され大ヒット。以後シリーズ化され30年以上も進化をし続け、現在も開発や販売が行われ2023年までに38モデルある。
まさか、毎年のように新作が発売されていたとは知りませんでした。
私も学生時代は履いていましたが、現在は所有していません。映画を観たらまた欲しくなってきました。
漫画「SLAM DUNK」の主人公・桜木花道が履いているのもエア ジョーダン(1と6)です。
作者の井上雄彦先生いわく、流川楓はマイケル・ジョーダンに憧れているから“エア ジョーダン5”を履いているが、桜木花道はジョーダンのことも知らない。
だから桜木には一番釣り合わない「豚に真珠」的なのが面白いと思い“エア ジョーダン”にしたようです。
38モデルもあるの!?
ワイも知らなかったよ
映画「AIR/エア」
Amazon Prime Video より
「AIR/エア」(原題:AIR)は2023年公開のアメリカのドラマ映画。
ナイキのバスケットシューズ“エア ジョーダン”の誕生の実話を映画化。
STORY
1984年アメリカ、業績不振だったナイキのバスケットシューズ部門。“ソニー・ヴァッカロ”はCEOの“フィル・ナイト”からバスケシューズ部門の立て直しを命じられる。ソニーが目をつけたのは後に世界的スターとなる“マイケル・ジョーダン”だった。ソニーたちはCEOも巻き込み一発逆転の賭けに出る。
世界で爆発的な売り上げを誇る、あの“エア ジョーダン”がどうやって誕生したのか?どうやって“マイケル・ジョーダン”にアプローチしたのか?
なんとなく興味がある人も多いのではないでしょうか。
1980年代当時のNIKE社の状態や競合他社とのパワーバランス、その後のマーケティングまで変えてしまった契約など…知らないことがたくさんあり勉強になりました。
とにかく熱くて、諦めずに頑張る勇気をもらえる…そんな映画です。
監督・製作・出演
ベン・アフレック(フィル・ナイト役)
本名ベンジャミン・ジェーザ・アフレックは、カリフォルニア州・バークレー出身のアメリカ人俳優、脚本家、映画監督、映画プロデューサー。
幼い頃から子役として活動し子供番組やテレビ映画に出演し、1995年に映画「モール・ラッツ」1997年「チェイシング・エイミー」などに出演。
1997年、友人の“マット・デイモン”と脚本を書いた「グッドウィル・ハンティング/旅立ち」でアカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞。
その後も1998年「アルマゲドン」や2001年「パール・ハーバー」2002年「チェンジング・レーン」などに出演。
また、2007年に「ゴーン・ベイビー・ゴーン」で監督を務め、2007年「ザ・タウン」2010年「アルゴ」でも監督をしている。「アルゴ」はアカデミー作品賞を受賞。
弟のケイシー・アフレックも俳優で、映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でアカデミー主演男優賞を受賞した。
「アルゴ」に続きまたも監督と出演をこなしたベン・アフレック。「AIR/エア」ではNIKEのCEOフィル・ナイトをいい感じに演じています。
無謀な挑戦をする部下に対し、非常にまともなことを言いますが…最後には…
ベンはマイケル・ジョーダンが違うと感じるところをひとつ残らず無くすように、マイケルの了承を得て注意深くこの映画を製作したようです。
弟も役者をしていてアカデミー賞を受賞しているとは知りませんでした。
主演・製作
マット・デイモン(ソニー・ヴァッカロ役)
本名マシュー・ペイジ・デイモンは、アメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジ出身のアメリカ人俳優、脚本家、映画プロデューサー。
ハーバード大学在学中の10代の頃から役者を目指す。1988年にジュリア・ロバーツ主演の「ミスティック・ピザ」の端役でデビュー。
無名時代に幼馴染の“ベン・アフレック”と共に書いた脚本が、長い月日をかけて1998年に「グッドウィル・ハンティング/旅立ち」として映画化され、アカデミー脚本賞を受賞し主演男優賞にもノミネートされた。
2001年「オーシャンズ11」2002年「ボーン・アイデンティティ」が大ヒット。共にシリーズ化されて人気シリーズとなる。
2007年には、ハリウッド“ウォーク・オブ・フェイム”に名前が刻まれた。
こないだ試聴した「フォード vs フェラーリ」に引き続き、またもやマット・デイモンです。
今回のソニー・ヴァッカロ役、運動嫌いの中年の男です。マットもお腹がぽっこりと出た姿で、“ジェイソン・ボーン”の面影は微塵もありません。
そして、またも素晴らしい演技を披露しています。NIKEのバスケットシューズ部門の再建のため、自身の進退をも賭けて大勝負に出る男。
思わず胸が熱くなる台詞で熱演しています。
マットはこの作品について「脚本を読んだ瞬間から映画の最後のカットに至るまで、ただただ喜びだった。私の人生の中でも最高の喜びだった」と語っています。
この2人のタッグはいいよね
期待しちゃうよね
1980年代
映画の舞台は1984年のアメリカです。冒頭で1980年代の懐かしい映像が流れます。
1980年代のアメリカは、ロサンゼルス オリンピックの開催、レーガン大統領の就任、「ナイトライダー」や「ゴースト バスターズ」が流行っていた。
日本ではグリコ・森永事件、日航機墜落事故、東京ディズニーランドがオープン、任天堂が「ファミコン」発売など、大きな事件や事故、新しいものが多く出てきた時代です。
NIKE ナイキ
当時のNIKEはランニングシューズではそれなりに成功していたが、バスケットシューズはまるで駄目で「NIKEはダサい」とまで言われていました。
NIKEのあの有名なロゴは「スウッシュ」と言いますが、大学生にたった35ドルで作らせたものなんです。
「Swoosh」は「ものがビューと素早く移動する時の音」のことで、スピード感や躍動感を表しています。
ポートランド州立大学でグラフィックデザインを専攻していたキャロライン・デイビッドソンは、ギリシャ神話の“勝利の女神ニケ(NIKE)”からインスピレーションを得てデザインしたと言われています。
ブランド名もニケ(NIKE)からきています。
adidas アディダス
ドイツに生まれたアドルフとルドルフのダスラー兄弟は、体育館専用のシューズを開発しビジネスを始めました。
やがて2人は独立し、アドルフはニックネームの“アディ”と“ダスラー”を合わせた「アディダス」をルドルフは後の「プーマ」となるルーダを設立しました。
1980年代では、adidasは既にテニスシューズで成功していて、あの有名な“スタンスミス”を世に出していました。
バスケットシューズでは業界2位で、なんとマイケル・ジョーダンはadidasを希望していたようです。
CONVERCE コンバース
1980年代前半のCONVERSEはバスケットシューズの売り上げが好調で、ロサンゼルスオリンピックでスポンサー契約も締結していました。
“ラリー・バード”や“マジック・ジョンソン”といったNBAのスターを広告に起用したバスケットシューズ「ウェポン」が大ヒットし、人気の“オールスター”と共にバスケットシューズのシェア率は50%以上で一人勝ち状態でした。
感想
この映画は全く退屈することなく観れます。結果がわかっているだけに、その過程に興味が湧くからでしょうか。
どう仕掛けるの?どうやって覆すの?と気になって観入ってしまいます。
結果がわかっている話なのに、これだけ視聴者を惹きつけて期待を外さない脚本と展開は凄いと思います。
ソニー・ヴァッカロ
ソニーがNBAデビュー前のド新人のジョーダンの将来性に確信を持ち、自分のキャリアの全てを賭ける。
もしかしたら怪我をするかもしれないし、思うような結果が出ないかもしれない。
それでも自分が“これだ!”と思ったものに突き進む姿は、観てるこちらも奮い立たせられます。
まさに“JUST DO IT”の精神!
そして次々と行動を起こします。NIKEの企業理念にある「プロセスより結果が全て。ルールに逆らえ」です。
ジョーダン一家へのプレゼンの熱い台詞には感動しました。
デロリス・ジョーダン
マイケル・ジョーダンの母親のデロリス。彼女が素晴らしい母親であり“ネゴシエーター”(交渉人)なんです。
自分の息子マイケルの才能を誰よりも信じ、そしてその将来性に確固たる自信を持っている。
マイケルも母親に絶大な信頼を寄せていて全てを任せている。
デロリスは言います。「マイケル・ジョーダンのネームバリューはNBAを上回る」
この台詞にはとんでもない“凄み”があります。ジョルノがブチャラティに見せたような…
そして、NIKEとの契約にその後のマーケティングを変えるぶっ飛んだ条件を提示します。
デロリス役に“ヴィオラ・デイヴィス”が起用されたのは、なんとマイケル・ジョーダン本人の希望だったからのようです。彼女が素晴らしい演技で見事にデロリスを演じます。
作品の最後にジョーダンのスピーチを聞くデロリス本人が出るんですが、ヴィオラが演じたデロリスとけっこう似ていました。
マット・デイモンの演技
やはり主人公のソニーを演じたマット・デイモンの演技は素晴らしかった。
運動嫌いで腹の出た、だらしない中年男の容姿。しかし、ジョーダンと契約するためにルールを破りリスクを負っても突き進む姿には感動し勇気づけられました。
特に、プレゼンシーンの熱い語りは必見です!
「A shoe is just a shoe until somebody steps into it. Then it has meaning. 」
あえて、英語の台詞だけ書いておきます。どう訳されているか映画を観て確認してください。
ソニーとフィルが会話するシーンもいいです。マット・デイモンとベン・アフレックのコンビはやはり外さないのか!
80年代の音楽
映画の挿入曲がまたいいんです♪
こちらのサイトにまとめてあったので覗いてみてください。「AIR/エア」の挿入曲とサントラFilmmusik
評価
2023年4月の公開当初は、辛口批評サイト“ロッテントマト”で批評家と観客どちらも99%トマトメーターでした。
現在は、批評家93%で観客は98%となっています。いずれにしてもかなりの高評価です。
Amazon Prime Videoでは、星4つ以上が89%、映画.comとFilmarksでは共に3.9。
ストーリーやテンポの良さ、ソニーの熱いプレゼンや母親の交渉術などの見どころを「面白かった」と皆さん褒めています。
実話だからこそ余計に引き込まれるのではないでしょうか。
特に派手なシーンもないのに飽きないんだね
こういう映画を「いい映画」って言うんだよ
ナイキとオニツカタイガー
ナイキの創業者フィル・ナイトは、大学時代に陸上選手として活躍し、論文でテーマにするほど日本のスポーツシューズに興味を持っていました。
1962年、卒業旅行で神戸に立ち寄ったフィルは、オニツカタイガーシューズの性能と低価格に感動した。
すぐにオニツカ社に連絡し、オニツカタイガー(現アシックス)創始者である鬼塚喜八郎との面会に成功。そして、アメリカ西部での販売代理店契約を決めたのです。
鬼塚はフィルの心意気に昔の自分を思い重ねて、思い切って販売店をやらせてみることにしたようです。
アメリカに帰国後、1964年にブルーリボンスポーツ社(BRS)を設立し1966年に1号店をサンタモニカにオープン。
その後にいろいろとオニツカと揉めて提携を解消し、独立してナイキ社を設立した。
このことは映画「AIR/エア」では一切触れていませんが、まあ…1984年以前でありナイキ社設立前の話だからでしょう…。
JUST DO IT
NIKEの有名なスローガン「JUST DO IT」の由来ですが、これは映画の中でも語られています。
当時ナイキの広告担当だったダン・ウィーデンが、殺人鬼で死刑囚のゲリー・ギルモアの最後の一言からヒントを得たと言われています。
1977年1月17日、アメリカは死刑制度を中止していたにもかかわらず、自ら銃殺刑を望んだギルモアの最後の一言が「Let’s do it」(さあ、やろうぜ)だった。
映画では「Just do it」と言ったとなっています。
ロゴの「スウッシュ」といいスローガンの「JUST DO IT」といい、かなり意外な誕生秘話ですね。
まとめ
今回ご紹介した「AIR/エア」ですが、まだ観たことがなかったり存在すら知らない人もいると思います。
あの伝説のシューズ“エア ジョーダン”誕生の実話!
世界中で大ヒットするという結果がわかっているのに、こんなに面白い映画になるとは…びっくりです!
ベン・アフレックとマット・デイモンの名コンビは期待を裏切りません。
バスケに興味がなくてもジョーダンに興味がなくても、きっと楽しめるいい映画です。
仕事が上手くいかないあなた、やる気が出ない人、モチベーションが上がらない人など、いろんな人に観てもらいたい映画であり勇気をもらえる映画です。
2022年の“エア ジョーダン”の売り上げは50億ドル(約6,700億円)を超えた。
2003年に引退した“マイケル・ジョーダン”は、NBA時代に稼いだ8,670万ドル(約115億円)の倍の1億5000万ドル(約200億円)の利益を“エア ジョーダン”から得たと言われています。
とんでもない金額を今でも稼いでいるマイケル・ジョーダンですが、NIKEとどんな契約をしていかにしてこれほどの報酬を得たのか?
映画「AIR/エア」はAmazon Prime Videoで配信されているので、是非ご覧になってみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございました
JUST DO IT.