2024年11月1日にアメリカで公開され、日本では劇場公開が見送られた映画「陪審員2番」
あのクリント・イーストウッド監督の引退作品ということで…以前から気になっていました。
現在94歳であるイーストウッド監督ですが、94歳で映画って作れるの?!と思ってしまう。
本人は“100歳まで映画を撮る”と宣言しているので、ぜひ100作目を観てみたいですね。
映画「陪審員2番」は、裁判の映画だということしか知りません。
どんな話なのか…U-NEXTにあったので観てみることにしました。

なんで2番?



んー、主人公の陪審員番号みたい


映画「陪審員2番」
U-NEXT公式Xより
陪審員2番(原題:Juror#2)は、2024年公開のアメリカの法廷サスペンス・スリラー。
クリント・イーストウッドが監督・共同製作し、ジョナサン・エイブラムスが脚本を担当した。
STORY
“ジャスティン・ケンプ”は雨の夜に車で何かをひいてしまったが、辺りに何もなく原因を突き止めることが出来なかった。その1年後、ケンプは殺人罪に問われた“ジェームズ・サイス”の裁判の陪審員をすることになった。裁判が進むにつれ、自分が事件の真犯人なのではないかと悩み苦しむ…。
監督:クリント・イーストウッド
上映時間:114分



わーお



正義とは何か…
監督
クリント・イーストウッド
クリント・イーストウッドは、カリフォルニア州・サンフランシスコ出身の俳優、映画監督、映画プロデューサー。
役者にはあまり興味がなかったが、人との出会いから1954年4月に週給100ドルでユニバーサルと契約。
同年に「半魚人の逆襲」で端役をもらい映画デビュー。その後もいくつかのテレビドラマに出演したが芽は出ず、プール工事など複数の仕事をして生活していた。
1959年から放送された西部劇テレビシリーズ「ローハイド」に出演し、番組が人気となったことでこの作品がキャリアの転機となる。
1964年「荒野の用心棒」1964〜1966年「夕陽のガンマン」3部作に出演するが、イタリア映画のためアメリカでの知名度は上がらなかった。
1970年代に「真昼の決闘」「戦略大作戦」、「恐怖のメロディ」では初監督、そして「ダーティーハリー」で人気者となる。
1992年、監督兼主演を務めた「許されざる者」でアカデミー監督賞と作品賞を受賞。2004年「ミリオンダラーベイビー」でもアカデミー監督賞と作品賞を受賞した。
その間に「マディソン郡の橋」や「ミスティック・リバー」なども監督・主演する。
2006年「父親たちの星条旗」2007年「硫黄島からの手紙」で日米戦争を双方の視点で描いた。
2008年の「グラントリノ」で俳優業を引退し、監督業に専念すると発言したがその後も出演している。
94歳でこのクオリティの作品が作れるのか…恐るべしクリント・イーストウッド。
この作品が引退作と言われていますが、まだ次の作品が観てみたいですよね。
被害者の“ケンドル・カーター”を演じたのは、イーストウッド監督の娘“フランチェスカ・フィッシャー=イーストウッド”です。
主演
ニコラス・ホルト(ジャスティン・ケンプ役)
イングランドのバークシャー・ウォーキンガム出身のイギリス人俳優。
6歳で俳優デビューし、2002年ヒュー・グラントと共演した「アバウト・ア・ボーイ」で知名度を上げた。
2007年からティーンドラマ「スキンズ」で主役の1人を演じ、俳優としてのキャリアを積む。
2009年「シングルマン」、2010年「タイタンの戦い」、2011年「X-Men:ファースト・ジェネレーション」
その後も「X-Men」シリーズに出演し人気となる。
2015年「マッドマックス 怒りのデス・ロード」では、物語のキーマンを演じた。
2018年「デッドプール2」、2024年「陪審員2番」、2025年「スーパーマン」でスーパーマンの宿敵“レックス・ルーサー”を演じた。
キャスト
役名 | 役者名 | 説明 |
---|---|---|
ジャスティン・ケンプ | ニコラス・ホルト | タウン誌の記者で真面目な男だが、アルコール依存症の過去がある 陪審員(2番)になったことで、1年前の記憶が蘇り苦悩する |
アリソン・“アリー”・クルーソン | ゾーイ・ドゥイッチ | ケンプの妻で、出産間近の妊婦 教師をしているが、現在は妊娠中のため休職している |
フェイス・キンブルー | トニ・コレット | 事件担当の地方検事補で、被告を有罪だと言い切っている 陪審員たちによって、その考えが揺らぎ始める |
エリック・レズニック | クリス・メッシーナ | 被告の公選弁護人で、キンブルー検事は昔からよく知っている仲 |
ジェームズ・マイケル・サイス | ガブリエル・バッソ | 短気で揉め事も多い前科持ちの被告 殺人罪を問われるが、無実だと主張する |
ハロルド・チコウスキー | J・K・シモンズ | 陪審員の1人(4番)で、生花店を経営している 元刑事(シカゴ警察)の血が騒ぎ、独自に調査を始める |
ラリー・ラスカー | キーファー・サザーランド | 弁護士で、ケンプが通っている断酒会を主催している |
ケンドル・カーター | フランチェスカ・フィッシャー=イーストウッド | サイスの恋人であり、今回の事件の被害者 |
ケイコ | 福山智可子 | 陪審員の1人(10番)で、医学を学んでいる医学生 被害者を医学的な視点から検証する |




感想
法廷ドラマは難しかったり退屈なイメージがありますが、この作品は内容もわかりやすくて面白かったです。
主人公と自分を重ねて考えたり、彼がどんな選択をするのか目が離せない展開でした。
意外な視点というか、「クリントさん、そうきたか…」という感じです。
正直に言えば人生が破滅する、黙っていれば無実の者を不幸にし罪悪感にさいなまれる。
映画を観ながら主人公と同じように、“自分ならどうするか”と悩みます。
ジャスティン
妻が妊娠中で、もうすぐ父親となるジャスティン。
タウン誌の記者で、アルコール依存症の過去がある。
そんな時にやってきた陪審員制度により、彼は殺人の罪に問われた男の裁判の陪審員に選ばれる。
検察官によって事件の詳細が説明されると、ジャスティンの過去の記憶が蘇ってくる。
面識のない他人の裁判のはずだったのに、自分は彼らと同じ時に同じBARにいたかも…
そして、1年前のあの日の夜のことを思い出していく。
それなりの“正義感”は持ち合わせているが、「真実を話せば家庭も人生も崩壊してしまう」という現実に悩み苦しむ。
“正義とは何か”“自分ならどうするか”と、視聴しながら非常に考えさせられました。
彼は嘘がつけない人間というか、動揺して顔や行動に出てしまうタイプです。
自分も似たようなタイプなので、「ちょっと似てるな」と思いながら観ていました。
もし何事もなく終わったとしても、彼は後に罪悪感に苛まれて苦しむことになるでしょう。
キンブルー
今回の殺人事件を担当する検事補のキンブルー。
検事長選挙が行われているため、今回の裁判は絶対に勝ちたいと思っている。
故に、初めから被告を有罪だと決めつけている。
こういう検察官が実際にいると思うと恐ろしいし、現実にいるのだと思う。
「袴田事件」のように警察や検察が証拠を捏造し、強引に自供させ殺人犯とする。
“正義”の名を借りて、“人が人を裁くから…間違いが起こる”
映画「正体」のレビュー記事でも書きました。
昇進や地位や名誉のために間違った判断をして、それにより誰かが不幸になる。
特に司法では、あってはならないことだと思います。
幸いキンブルーには“真実が正義をもたらす”という考えがあったので、少しずつ疑問を持ち始めました。
最後の彼女の表情が印象的だったので、ぜひ観ていただきたいと思います。
ラスカー
弁護士であるラスカーは、ジャスティンが通っている断酒会を主催している。
画面に突如現れたのは、「24-TWENTY FOUR-」の“ジャック・バウアー”で有名な“キーファー・サザーランド”です。
ジャスティンから、自分が関わったかもしれない事件の相談を受け助言する。
たいして出番はありませんでしたが、あれぐらいが丁度良かったのかもしれません。
チコウスキー
陪審員4番のチコウスキーは、生花店の経営者である。
しかし、元シカゴ警察の強盗殺人課の刑事だったということが後に判明する。
刑事の性か、個人的に事件の調査を始めてしまう。
チコウスキーは、元刑事だけにケンプの車は把握しているし優れた洞察力を持っている。
ケンプにとっては、彼は恐ろしい存在であっただろう。
演じた“J・K・シモンズ”が素晴らしかったです。
ラストシーン
ラストは、この後“どうなったかはご想像にお任せします”というスタイルでした。
しかし、ほとんどの人が予想した通りの未来が待っていると思います。
「何もしないから大金をよこせ」だったら、それはそれで面白いですけどね。笑



キンブルーが目で語ってたよね



察してくれ…と言わんばかりにね
陪審員制度
陪審員制度とは、刑事裁判において一般市民である陪審員が証拠や証言を聞き評議し、有罪か無罪かを判断する制度。
裁判官ではなく、陪審員の判断のみで判決が下るのが特徴。
現在で陪審員制度がある国は、アメリカ・イギリス・カナダ・ロシアで、陪審員に選ばれる確率は0.01%程だと言われています。
日本でも過去に陪審員制度があり、1928年(昭和3年)から1943年(昭和18)まで行われていた。
廃止になった理由は、「陪審事件数が減る一方、戦争が激化する中で、陪審制度維持のための労力(市町村による陪審員資格者名簿・候補者名簿作成の事務負担など) を削減する必要があるため」と説明されている。
陪審制の復活を希望
現在の日本では、外国人が日本人を殺しても不起訴になったり…強盗や窃盗を犯しても不起訴になっています。
司法が完全に崩壊していて、公正でなければならない裁判が腐敗している。
陪審制を復活させた方が、より公正な裁判が出来るのではないでしょうか。
説明もなしに不起訴になっていれば、裁判官が買収されていると考えるのもおかしくありません。
一般人から選ばれた陪審員が評議すれば、絶対に有罪になるような事件ばかりです。
こんな現状の今こそ、陪審制を復活させるべきではないでしょうか。
裁判官が判決を下すのと陪審制はどちらがいいのか?
陪審員も買収されてしまうかもしれないが、1人より12人で評議した方がいいのかもしれない。
評価
Rotten Tomatoesでは、トマトメーター(批評家)93% ポップコーンメーター(観客)91%
metacriticでは、メタスコア(批評家)72/100 ユーザースコア(観客)6.6/10
IMDbでは、IMDbレーティング7.0/10 ユーザー評価7.0/10
特にロッテントマトで、批評家とユーザー共に高評価が出ています。
意外な展開で非常に考えさせられる、リアルで深いテーマだったのではないでしょうか。
とても優れた脚本で、派手な出来事がなくてもずっと観ていられる作品でした。


まとめ
クリント・イーストウッド監督の引退作品と言われている映画「陪審員2番」
アメリカで2024年11月1日に公開されましたが、日本では劇場公開が見送られた作品です。
2025年6月3日現在、U-NEXTの独占配信となっています。
法廷ドラマとしては観やすく、決して難しい話ではありません。
派手な出来事はありませんが、非常に興味をそそられ考えさせられます。
“自分ならどうするか”と主人公と自分を重ね、正義と罪悪感の間で苦悩する。
イーストウッド監督の最後の作品に相応しい、素晴らしい脚本だったと思います。
とはいえ、次回作もあるんじゃないかと密かに期待してしまう。
“正義とは何か”…ぜひ視聴してみてください!



最後まで読んでいただきありがとうございます



真実が正義とは限らない