Amazon Prime Videoで、トップに大きくフィーチャーされていた映画「ドッグマン」
奇妙なタイトルデザインだったので、なかなか観るまでに至らなかった映画。
「ドッグマン」とは一体なんなのか?どんな映画なのか?
やっと視聴することになりました。
ドッグマン…
ワイはキャット
映画「ドッグマン」
映画.com&Unifranceより
ドッグマン(原題:Dogman/DogMan)は、2023年公開(日本は2024年)のフランス映画。
「レオン」「ニキータ」のリュック・ベッソンが監督・脚本を務めた。
STORY
ある夜、一台のトラックが警察に止められた。運転していたのは、負傷し女装をしている怪しい男。荷台には十数匹の犬が乗せられていた。「ドッグマン」と呼ばれるその男“ダグラス”は、自らの壮絶な半生を精神科医の“エヴリン”に語り始めた。父親から暴力を受け、犬小屋に閉じ込められて育った少年時代。あることで両脚が動かなくなり、車椅子での生活を強いられる。恋をしては傷つき、必死に世間に馴染もうとするも上手くいかない。そんな彼を愛し救ってくれたのは犬たちだった。生きるために犬たちを操り犯罪に手を染めるダグラスだったが、そんな中“死刑執行人”と呼ばれるギャングに目をつけられてしまう。
監督:リュック・ベッソン
上映時間:114分
人より犬を愛する男
音楽がいいね
監督
リュック・ベッソン
本名:リュック・ポール・モーリス・ベッソンは、フランスの映画監督、脚本家、映画プロデューサー。
両親は共にスキューバダイビングのインストラクターで、ベッソン自身もダイビングをしていたが、17歳の時に潜水事故にあいスキューバダイビングができなくなった。
その後、映画の雑用的な仕事をしながら映画作りのノウハウを学ぶ。
1981年短編映画「最後から2番目の男」で監督デビュー。1988年「グラン・ブルー」1990年「ニキータ」は話題となる。
1994年「レオン」が世界中でヒットし、リュック・ベッソンは有名監督となった。
1997年「フィフス・エレメント」1999年「ジャンヌ・ダルク」を監督し、製作・脚本では「TAXi」「トランスポーター」「96時間」などのシリーズを手掛けている。
アクションから歴史巨編まで幅広いジャンルの映画を製作し、女性を主人公や物語の軸とする作品が多い。
私生活では「ニキータ」の主演女優アンヌ・パリローと結婚し離婚、ミラ・ジョボビッチなど何度か結婚と離婚を繰り返している。
リュック・ベッソンの映画はけっこう観ています。
特に「レオン」は衝撃的で、何度も繰り返して観ました。
ジェイソン・ステイサムを人気者にした「トランスポーター」シリーズは大好きです。
今回の作品もリュック・ベッソンらしい“バイオレンス・アクション”と“女性(女装)”を組み込んでいます。
主演
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(ダグラス・マンロー役)
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズは、アメリカ・テキサス州ガーランド出身の俳優、ミュージシャン。
17歳の時「ノーカントリー」で映画デビュー。2010年「ラスト・エクソシズム」で悪魔に憑依された少女の兄を演じ評価される。
2011年「X -MEN:ファースト・ジェネレーション」で注目を浴び、同年の「アンチヴァイラル」で初主演。
2012年「ハード・ラッシュ」2014年「クィーン・アンド・カントリー」2017年「ゲット・アウト」「スリー・ビルボード」
ミュージシャンとしても活動していて、「ロバート・ジョーンズ」というバンドでボーカルとドラムを担当。
ドラム以外にも、ギターやピアノ、ハーモニカも演奏できる。
俳優として仕事が軌道に乗ってからは、バンド活動は休止している。
ケイレブを認識したのは、この作品「ドッグマン」が初めてです。
作中でエディット・ピアフの「La Foule(群衆)」という曲を歌うんですが、あれは本当にケイレブが歌っているんでしょうか。
さすがに、本物のエディット・ピアフの歌声を被せているようです。
それは少し残念でしたが、それ抜きでも彼の演技は素晴らしかったです。
今後の“ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ”に注目していきたいと思います。
感想
“Wherever there is an unfortunate, God sends a dog.“
「不幸な者のいるところあまねく、神は犬を遣わされる」
映画「ドッグマン」は、この言葉から始まる。
犬は神の遣いなのか…
彼が信じ愛したのは、人間ではなく犬たちだった。
犬たちは可愛いが、ダグラスの壮絶な半生に切なくなる。
彼が生まれた家庭環境が、彼の人生を狂わせてしまった。
神は、なぜ彼にこんな試練を与えたのだろうか…。
少年時代
ダグラスの少年時代…とにかく父親がイカれていたから、幼い彼にはどうしようもなかった。
母のことは好きだったが、父親に暴力で制圧されていて兄貴は完全に父親の手下。
ダグラスにとって、父親の暴力は不可避だった。
「犬が好きだ」と答えただけで、犬小屋にぶち込まれて監禁される。
ここまででも既に悲惨でめちゃくちゃな話だが、ダグラスはこの後に起こることで両脚が動かなくなってしまいます。
ひどい家庭環境と狂った家族が、彼の人格形成に大きな影響を与えた。
凶悪犯や猟奇殺人者は、たいてい幼少期に親から愛を与えてもらえずトラウマ的な出来事があるといいます。
子は親を選ぶことが出来ませんが、世の中にはダグラスのように悲惨な少年時代を過ごしている子たちがいる。
それを考えると、胸が苦しくなってきます。
実際にあった出来事
父親によって、犬のケージに4年間も閉じ込められていた5歳の男の子。
実際にあった小さな新聞記事から、リュック・ベッソンはこの物語の着想を得たらしいです。
彼は一体どんな大人になるんだろうと…。
IN THE NAME OF GOD
“神の御名(みな)において”という横断幕を兄が犬小屋に張ります。
それを裏側(小屋の中)から見たダグラスには、柱で“OF”とNAMEの“E”が隠れて「DOGMAN」と見えた。
犬小屋の中で“犬と心を通わせた”彼は、犬を使って親父と兄貴、そして犬小屋から解放されることになる。
施設で出会った演劇と恋
車椅子の生活となったダグラスは施設で暮らすこととなり、そこで演劇と出会い初めて恋をします。
年上で明るく華やかな“サルマ”は、ダグラスにメイクや演劇の素晴らしさを教えてくれた。
彼は演劇を心から楽しみ、サルマに憧れました。
この時のダグラスは、悲惨な幼少期や不自由な両脚のことも忘れて、生きる喜びを感じているようでした。
サルマがずっと施設にいれば、彼は違った人生になったのかもしれない。
傷ついた心
サルマは施設を去り、やがて舞台女優として成功します。
ダグラスは、彼女の足跡を記事を通して追いファイルブックを作成していました。
彼女に恋をし続けやっと会うチャンスが…しかし、彼女は既に結婚していたという事実を知る。
サルマがファイルブックを見ている時、彼女の表情が変わったので「何これ気持ち悪い」とでも言うんじゃないかとドキドキしました。
ずっとサルマを想っていたダグラスの心は、一気に崩壊し激しい哀しみに苛まれます。
そして、「やはり自分を愛し救ってくれるのは犬たちしかいない」ことを再認識します。
ここは感情が爆発したね
うん、切なかった
再出発と虚像
働いていた犬の施設が閉鎖され、生きるために職を探します。
しかし、車椅子ではどこも雇ってくれません。
ハンディキャップを負いながら社会に順応しようと、手当たり次第に面接を受けますが現実は残酷です。
やっと見つけたキャバレーで、ダグラスは歌を披露し採用される。
彼は、また自分が過去を忘れ“偽りの姿になること”に喜びを感じた。
ワンワン窃盗団
たくさんの犬たちを養うには、それなりのお金が必要です。
ダグラスの言葉を理解する犬たちは、なんとチームで動き金持ちの家から時計やネックレスを盗みます。
金目のものが分別できるワンちゃんたち…少々やり過ぎな感じがする。
ダグラスはこれを“富の分配”と言い、特に罪悪感は感じていない様子。
犯罪は犯罪だが、彼の言いたいことも少しわかる気がする。
“ワンワン窃盗団”の侵入から窃盗までが見事だったので、もっといろんなパターンが観たかったです。
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この映画は「挿入歌」が素晴らしいので、いくつかご紹介したいと思います。
ダグラスがメイクを落としベッドに寝るまでに流れる「Speak Softly Love」
この曲は「ゴッドファーザー 愛のテーマ」に英語の歌詞がつけられたものです。
ダグラスがキャバレーの初舞台で披露した曲「La Foule」(邦題:群衆)
ペルーのワルツをフランス語で歌った曲です。
ダグラスが、レコードをかけながらメイクをするシーンとステージのシーンで流れる「Lili Marlene」(リリー・マルレーン)
第二次世界大戦中にヨーロッパで流行った、ドイツで生まれたラブソングです。
ダグラスが拘置所を出て、教会に向かって歩くシーンで流れる「Non, je ne regrette rien」(邦題:水に流して)
クライマックスに、再び“エディット・ピアフ”の曲が流れます。
他にも“マリリン・モンロー”や“ABBA”の名曲なども流れます。
この映画を観たら、サントラが欲しくなる人がいるのではないでしょうか。
保険会社の男
ワンワン窃盗団が、大富豪を担当する“保険会社の男”にバレます。
この男は自らダグラスに接近し、銃を持って隠れ家に現れる。
なんでただの保険会社の男が、警察そっちのけで銃を手にして不法侵入するんだよ。
こやつの行動がよくわかりませんでした。
犬たちは悪者を見分け、“悪者は成敗して良し”と教えられているようです。
それとも“神の意志”でしょうか…。
黙示録の天使
ついに、“死刑執行人”と呼ばれるギャング「エル・ヴェルドゥゴ」が報復にやってきます。
ダグラスが「みんな戦闘準備」と言うと、犬たちは持ち場へと散っていきます。
そんな馬鹿な…。
建物を知り尽くした犬たちは、次々とギャングたちを襲い罠にハメていく。
これは凄い統率力と連携プレーだ!
しかも、銃を持つギャングたちに1匹の被害も出していない。
狭いビルでの銃撃戦は「レオン」を彷彿させます。
賢いんだよね〜犬たちが
“戦闘準備”で散ってたのには笑ったよ
ダグラスとエヴリン
エヴリンはダグラスに「なぜ話したの?」と聞き、ダグラスは「同じもの(痛み)を持っているから」と答えます。
エヴリンもまた、父親から虐待を受けていた過去があるからです。
そして、エヴリンの夫も同じくDVで施設に収監され接近禁止命令も出ている。
ダグラスは、エヴリンに同じ匂いを感じたのでしょうか。
最後のシーンで、エヴリンの自宅前にドーベルマンの“ドアマン”が座っている。
エヴリンと子供を夫から守るためでしょうか。
ダグラスを救おうとしていたエヴリンは、結果的にダグラスに救われます。
最後のシーン
拘置所の警備は1人だけなのかよ!無用心過ぎてワンちゃんたちも楽勝。
ダグラスが立ち上がり教会に向かう。
神の名の下に犯罪を犯したことに、“神の赦し”を請おうとしたのか。
だから、エディット・ピアフの「水に流して」が流れているのか。
「全て償った精算した、過去などどうでもいい、後悔なんて何もない」と歌っています。
いや、ダグラスは神の遣いである犬を与えられ助けられた、最後に神の元へ行くことで彼の人生は完了したのか。
人それぞれ解釈が分かれると思います。
素晴らしいラストシーンでした。
エンドロール
エンドロールでCASTの後に、“HERO DOGS”としてワンちゃんたちの名前が出ます。
お金持ちの家に侵入した時に、リーダーとして先導した賢いジャック・ラッセル・テリアの“ミッキー”
ダグラスを犬小屋から脱出させるのに活躍したボーダーテリアの“モビー”
隠れ家の入り口で門番をしていたドーベルマンの“ドアマン”
彼らの実際の名前もエンドロールに表示されている。
素晴らしい役者犬でした。
評価
Rotten Tomatoesでは、トマトメーター(批評家)60% オーディエンススコア(観客)82%
metacriticでは、メタスコア(批評家)45/100 ユーザースコア(観客)6.3/10
IMDbでは、IMDbレーティング6.8/10 ユーザー評価7.1/10
思ったより批評家の評価が低いですね。
でもユーザーの評価が高いのは、面白い映画に多い傾向です。
まとめ
映画「ドッグマン」は、2024年8月12日現在、Amazon Prime Videoで見放題となっています。
「ニキータ」「レオン」のリュック・ベッソンが、監督と脚本を務めたバイオレンス・アクション映画。
酷い家庭環境で育ち、悲惨な経験をした少年時代を過ごした主人公ダグラスの壮絶な半生。
神は不幸な彼に犬を遣わせ、彼は神の名の元に悪人を懲らしめる。
ただの犯罪か、それとも“ダークヒーロー”なのか!?
彼の人生を観ていると、切なく苦しい気持ちになります。
“犬は人間の持つ美徳を全て兼ね備えているが、ひとつだけ欠点がある…それは人への忠誠心”
この言葉が印象に残りました。
賢く可愛い犬たちとバイオレンスのコントラストは、リュック・ベッソンらしさを感じさせます。
とっつきにくいタイトルビジュアルですが、非常に興味深く考えさせられる作品です。
ぜひ一度、試聴してみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございます
神が望むなら…