監督マーティン・スコセッシ、主演レオナルド・ディカプリオ、そして名優ロバート・デ・ニーロ
このトリオから“駄作”は生まれない。もはや“期待”しかないだろう。
アメリカが決して忘れてはならない史実!
アメリカが犯した罪と消せない黒歴史!
巨匠マーティン・スコセッシが描く衝撃の実話!「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
ゴクリ…
人間とは恐ろしい生き物よ
映画「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
パラマウント・ピクチャーズ公式Xより
キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(Killers of the Flower Moon)は、2023年公開の実話を基に描かれたアメリカのクライム映画。
STORY
1920年代のアメリカ・オクラホマ州オーセージ群。先住民オセージ族は、石油の発掘により巨万の富を得ていた。そのオイルマネーに目をつけた白人たちが集まり、その富を奪おうと彼らを巧みに操り…やがて殺人事件へと発展していく。
実話を基にしたデヴィッド・クランの小説「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」を巨匠マーティン・スコセッシが映画化。
製作総指揮・主演はレオナルド・ディカプリオ、共演に名優ロバート・デ・ニーロ。
オセージ族の女性と結婚した白人男性(アーネスト)とその妻(モリー)を中心に、アーネストを操り財産を狙う叔父(ヘイル)の野望とオーセージ族に起こった悲劇を描いている。
スコセッシとディカプリオは「ギャング・オブ・ニューヨーク」や「アビエイター」などを経て、今回で6度目のタッグとなる。
また、スコセッシとデ・ニーロは「タクシードライバー」や「グッドフェローズ」などの名作でタッグを組み、今回で10度目となる。
スコセッシとデ・ニーロとディカプリオが組んだ「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
面白くないわけがない!期待しかないでしょう!
Apple Original Films「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」は、Apple TV+で配信されています。
本編は3時間26分
3時間26分もあるんだ!?
スコセッシだけ長くなっております
監督
マーティン・スコセッシ
マーティン・チャールズ・スコセッシは、ニューヨーク州ニューヨーク出身の映画監督、脚本家、映画プロデューサー、映画俳優。
イタリア(シチリア)移民2世の両親の次男として、ニューヨークで生まれリトル・イタリーで育つ。
ニューヨーク大学の映画部で学び、1969年「ドアをノックするのは誰?」で監督デビュー。
1973年「ミーン・ストリート」が映画批評家から大絶賛を受け、ここからロバート・デ・ニーロとのタッグが始まる。
1976年デ・ニーロが主演した「タクシードライバー」がカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。その後も「レイジング・ブル」「グッドフェローズ」など、デ・ニーロとのタッグで高い評価を得る。
2002年「ギャング・オブ・ニューヨーク」でレオナルド・ディカプリオと初のタッグを組む。
2004年「アビエイター」2006年「ディパーテッド」でも続けてディカプリオと組み、自身初のアカデミー作品賞とアカデミー監督賞を受賞した。
その後も「ウルフ・オブ・ウォールストリート」や「アイリッシュマン」などを監督し成功を収めている。
今や誰もが認める“巨匠”と言われる映画監督。
スコセッシといえば“マフィア映画”や“ギャング映画”といったイメージです。
暴力的な描写が多く、腐敗し矛盾した現実の中での人間の心理や苦悩を描く作品が多い。
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」撮影前にスコセッシはオクラホマ州のオセージ族を訪れ、彼らをリスペクトし映画への関わり方を話し合い助言を求めました。
今までスコセッシ×デ・ニーロやスコセッシ×ディカプリオはあったものの、三人がトリオを組んだことはありませんでした。
初めて実現したこのトリオ、もしかしたら最初で最後かもしれません。観なきゃ損ですね!
主演・製作総指揮
レオナルド・ディカプリオ(アーネスト・バークハート役)
レオナルド・ウィルヘルム・ディカプリオは、カリフォルニア州ロサンゼルス出身の俳優、脚本家、映画プロデューサー、環境活動家。
10代でCMやテレビドラマに出るようになり、1993年ジョニー・デップ主演の「ギルバート・グレイプ」で19歳の若さでアカデミー助演男優賞にノミネートされる。
その後も、1995年「バスケットボール・ダイアリーズ」1996年「ロミオ+ジュリエット」と出演を重ね、1997年ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」で一躍スターとなる。
2002年マーティン・スコセッシ監督の「ギャング・オブ・ニューヨーク」に主演し高い評価を得る。
2004年、初めてプロデュースした「アビエイター」で再びスコセッシと組み、ゴールデングローブ賞ドラマ部門主演男優賞を受賞。
それ以降も「ディパーテッド」「ブラッド・ダイヤモンド」「インセプション」などで主演し、2013年「ウルフオブウォールストリート」で再度スコセッシとタッグを組みゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞。
また、映画人の他に環境活動家の一面を持っている。プリウスなどのハイブリッドカーを所有したり、代替肉やヴィーガン食品のハンバーガー開発会社などに投資している。
「ギルバート・グレイプ」で初めてディカプリオを見た時、若いのにすごい演技をする役者だなと思ったことを覚えています。
「タイタニック」で一気に大ブレイクしたディカプリオですが、“アイドル的なイメージ”がついたことがかなり嫌だったようです。
「タイタニック」以降、そのイメージを払拭するのに相当の苦労をしました。
しかし「ギャング・オブ・ニューヨーク」や「ブラッド・ダイアモンド」「ディパーテッド」などで、男くさい役を演じることで見事にイメージ払拭を果たしました。
今回のアーネスト役では、“馬鹿で情けない中年の男”を演じるディカプリオ。そこにかつての“レオ様”の影は微塵も見えません。
当初ディカプリオはFBI捜査官のトム・ホワイト役の予定でしたが「それではオセージ族の物語に浸かれない」と、自ら提案しアーネスト役に変更されたそうです。
共演
ロバート・デ・ニーロ(ウィリアム・ヘイル役)
ロバート・アンソニー・デ・ニーロ・ジュニアは、ニューヨーク州ニューヨーク出身の俳優、映画監督、映画プロデューサー。
10歳の頃から演技を始め、後にリー・ストラスバーグの「アクターズ・スタジオ」でメソッド演技を学ぶ。ステラ・アドラーにも師事し、スタニスラフスキー・システムを学んだ。
1965年「マンハッタンの哀愁」でデビューし、いくつかの作品を経て1973年マーティン・スコセッシ監督の「ミーン・ストリート」に出演し高い評価を得た。
1974年フランシス・フォード・コッポラ監督の「ゴッドファーザー PARTⅡ」で若きヴィトー・コルレオーネを演じ、アカデミー助演男優賞にノミネートされる。
1976年スコセッシ監督と再びタッグを組んだ「タクシードライバー」で、アカデミー主演男優賞にノミネートされ批評家からも大絶賛された。
1980年4度目のタッグとなるスコセッシ監督の「レイジング・ブル」でついにアカデミー主演男優賞を受賞。
その後も数々の映画に出演し名作を残し、多くの賞を受賞して誰もが認める名優として現在も君臨している。
ストイックに役作りをすることで有名で、彼の役作りは“デ・ニーロ・アプローチ”と言われている。
“デ・ニーロ・アプローチ”といえば、
- 「タクシードライバー」の役作りで3週間ニューヨークでタクシードライバーとして働いた。
- 「レイジング・ブル」ではボクサー役で鍛え上げたボディを見せた後に、引退後の姿を演じるために20キロも体重を増やした。
なんてのは、けっこう有名な話です。
口をへの字にして話す姿はお馴染みですよね。今回ディカプリオがそんな感じで演技していたので、初めは笑ってしまいました。
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」でデ・ニーロは、ウィリアム・“キング”・ヘイルというめちゃくちゃ胸糞悪い極悪人の役です。
さすがは名優デ・ニーロ、ヘイルの表と裏の顔を見事に演じています。
リリー・グラッドストーン(モリー・カイル役)
リリー・グラッドストーンは、アメリカ・モンタナ州出身の女優。
2012年「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」で映画デビューし、その後いくつかのインディペンデント映画やテレビドラマに出演。
2023年マーティン・スコセッシ監督の「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」に出演し、ロバート・デ・ニーロとレオナルド・ディカプリオとの共演を果たした。
ほぼ無名のインディーズ女優が、スコセッシ監督の映画で主要キャラにキャスティングされるなんて凄いことです。
自らオーディション用にセルフテープを送り、スコセッシとの台本読みやディカプリオとのミーティングを経てモリー役に決まったようです。
撮影現場ではデ・ニーロやディカプリオを前にして手が震えたらしいですが、彼女はそれを感じさせない見事な演技を披露しています。
静かで深く力強い“目で語る演技”が印象的でした。
監督とキャストでこの映画に期待しちゃう!
素晴らしい演技で魅せる悲劇の実話
オセージ族(オーセージ族)
“オーセージ”とは「穏やかな水」という意味で、彼らは非常に背が高く勇敢で好戦的なアメリカ中西部の先住民です。
19世紀、オセージ族はアメリカにカンザス州からオクラホマ州への移住を強制された。
20世紀初頭、オセージ族の保留地の地下から石油が発見され、鉱物の共有権を保持していた彼らは莫大な富を得ました。
年間約4億ドル(600億円)相当の石油により、オセージ族は“世界で最も裕福な部族”と言われたのです。
迫り来る白人たちの影
当時のアメリカでは「先住民は世間知らずで粗野な人々であり、手に入れた富を浪費しないよう白人が監督すべきだ」という見解で、先住民に権限は持たせない法整備を進めていました。
オセージ族は自分のお金も自由に引き出すことが出来ず、後見人である白人たちによって管理されていた。
さらに、オセージ族と結婚した白人には財産を管理する権利が与えられた。
インディアン連続怪死事件
白人たちは財産目当てでオセージ族の女性と結婚したり、遂には財産を得るために殺しにまで手を染めていったのです。
次々と謎の死を遂げるインディアン。しかし、警察は全く捜査をしません。
「インディアンの命は犬より軽い」という台詞が映画に出てきます。
酷過ぎます!こんな非人道的な行為は絶対に許されません!もはや人にあらずです。
もともと住みついていた先住民を強制的に追い出しておきながら、石油が見つかって大金を得ると今度はそれを奪おうと法律を変え殺人までするとは…
1925年までに少なくとも60人のオセージ族が死亡したようです。
信じられないほど傲慢で強欲!
人のカタチをした悪魔です!
かつて世界中で侵略を進めていた白人たちですが、おそらく似たような出来事は世界各地で起きていたのではないでしょうか。
最悪だね…
お金は人を狂わせる…
アーネスト・バークハート
ディカプリオ演じるアーネストは、戦争帰りの白人の男でオクラホマ州オーセージに住む叔父のウィリアム・“キング”・ヘイルの元へやってきます。
キングのすすめでアーネストはオセージ族の女性モリーの運転手をすることになり、そこから物語は動き出します。
アーネストはキングには逆らえず、言われた通りに何でもする情けない男です。ディカプリオはこの芯のないダメ男を見事に演じています。
愛するモリーと逆らえないキングとの間で変化していくアーネストをぜひ観ていただきたい。
ウィリアム・“キング”・ヘイル
デ・ニーロ演じるヘイルは、オーセージの有力者であり保安官代理でもあり、オセージ族の信頼もある人物です。
モリーの家族とも昔から親交があり、自らのことを“オセージ族の真の友人”と言います。
しかし、それらは表の顔であって裏ではとんでもない極悪人です。はっきり言って“クソ野郎”です!
オセージ族の人が体調を崩せば心配そうに声を掛け、コミュニティに寄付したり「私はあなた達を支援してコミュニティに貢献していますよ」と言わんばかりにアピールします。
私はこういう人間が大嫌いです!表ではいい顔して、裏では悪態をつく奴。
金のためなら人を殺すこともためらわず、自分の保身のためなら肉親すら殺そうとする男。
しかも、自分の手は汚さず人を操って殺します。
欲にまみれた最低の人間です。
デ・ニーロがヘイルの表の顔と裏の顔を巧みに演じ分けています。観てるこちらにもその狂気が伝わってきます。さすがは名優ロバート・デ・ニーロ。
人の皮をかぶった悪魔
ヘイルのような人間が一番の極悪人だと思います。アメリカドラマの「ブレイキング・バッド」に出てきた麻薬カルテルのボス、グスタヴォ・“ガス”・フリングを思い出します。
ガスは表ではフライドチキン店の経営者であり、常に礼儀正しく紳士で、地域に寄付もする人格者です。
しかし、裏の顔は麻薬カルテルのボスで平気で人を殺す非常に冷酷な男です。
実在したコロンビアの麻薬王“パブロ・エスコバル”も、麻薬で稼いだお金で寄付や慈善活動をしていました。
彼らのような人の皮をかぶった悪魔は、昔も今も世界の権力者の中にいるのだと思います。
世界的な大富豪のあの人や、かつて大統領だったあの人たちもそうなのかもしれません。
モリー・カイル
リリー・グラッドストーン演じるモリーは、純血のオセージ族の娘で4姉妹の1人で糖尿病を患っています。
モリーは自身を“無能力者”と言います。
「先住民の能力は血の濃さで決まる」と白人に勝手に決めつけられ、“純血”なモリーは無能力者ということです。
しかし、本当のモリーは非常に頭が良く冷静沈着な女性です。
モリーはアーネストのことを“ショミカシ”と言います。ショミカシはオセージ語で“コヨーテ”を意味します。
オセージ族の財産を狙う白人を、獲物を狙うコヨーテに例えていたのでしょう。
コヨーテはとても賢くて学習能力が高い動物ですが、性格は凶暴で残酷な一面があります。
まさに、欲望に満ちた白人たちといった感じです。
モリーは最初から見抜いていたのです。でも、自分を愛してくれるアーネストを信じたい気持ちもあったんだと思います。
彼女は冷静にアーネストを見つめ、最後には見極めることになります。
そんな、リリー・グラッドストーンの演技を映画で確かめてください。
この3人の演技が凄いんだよな〜
映画観て確かめないと!
Killers of the Flower Moon(花殺しの月)とは
“フラワームーン”は、ネイティブ・アメリカンであるオセージ族が5月の満月を指す言葉。
4月に無数の小さな花が大地には咲き乱れ、5月の満月の頃になるとさらに背の高いムラサキツユクサが咲く。それにより先に咲いた小さな花たちは皆枯れてしまう。“花殺しの月”はそれから由来された。
FBIの前身
ワシントンから司法省捜査局の捜査官トム・ホワイトがやってきます。彼が所属する司法省捜査局がFBI(アメリカ連邦捜査局)の前身だと言われています。
実際にFBIの初代長官“ジョン・エドガー・フーバー”は、この「インディアン連続怪死事件」をラジオドラマでFBIの宣伝のように扱った。
ラジオドラマ
最後のラジオのシーンは、1931年から始まったラッキーストライク提供のラジオ番組で、この史実を歪めて人々に伝えたFBIとフーバー長官に対する皮肉だったのではないでしょうか。
最後にスコセッシが語るシーンをお見逃しなく!
トム・ホワイト役
当初ホワイト役に配役されていたディカプリオは、白人のFBI捜査官が主役になり事件を解決するヒーロー的な描写になるのが嫌だったようです。
だからアーネスト役を希望し、スコセッシが2年かけて書き上げた脚本を書き直させた。
それにより、ホワイトのシーンは大幅に削られた。
代わりにホワイト役を務めたのは、ジェシー・プレモンスです。
「ブレイキング・バッド」にも出ていたし、ちょくちょく見る顔です。きっと見たことある人もいるでしょう。
ハエの意味
映画の中で“意味深な感じ”でハエが出てきます。アーネストが具合の悪いモリーの横にいる時と、司法省捜査官から取り調べを受けている時です。
そして、エンドロールにも虫の音やハエの飛ぶ音が流れます。
確かに、観ていて「なんでハエを払う描写が出てくるんだろう」と少し気になりました。
調べるとハエには、邪悪、汚れ、病気、災害などネガティブな要素を象徴することがあるようです。
主人公のアーネストが“汚れていくさま”を表現していたのかもしれませんね。
いろいろと深いね
1回観ただけではわからないかもね
まとめ
今回は、マーティン・スコセッシ監督の長編映画「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」をご紹介しました。
アメリカが決して忘れてはならない悲劇の史実
人間の弱さと欲望の果てを描いたドラマ
206分という長さを感じないほど、ディカプリオ、デ・ニーロ、リリー・グラッドストーンの演技と真実の物語から目が離せなくなります。
人は金を求め、金に狂わされます。
人の欲望は底なしで、欲望は人の心を失わせます。
観終わった後に、いろいろと考えさせられる作品です。
巨匠スコセッシも名優デ・ニーロも80歳ぐらいです。スコセッシ×デ・ニーロ×ディカプリオの映画は、もしかしたらもう観れないかもしれません。
風化させてはいけないこの悲劇の実話を…ぜひご覧ください!
最後まで読んでいただきありがとうございました
“二ウコンスカ”